【W杯】“砂漠の国”を感じさせないカタール大会 報道陣の気力を補給する開放的な休憩スペース
【カメラマンの目】芝生にパラソルとソファ、サッカーゲームがある憩いの場
写真は薄暮に包まれたどこかのリゾート地ではない。奥に見える建物はカタール・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦で日本代表とクロアチア代表が激闘を繰り広げたアル・ジャヌーブ・スタジアムである。国の三方を海に囲まれたカタールは漁業や真珠採取が盛んで、そこで使用される伝統的なダウ船の帆をイメージしたデザインのスタジアムだ。
メディア用のゲートでセキュリティーチェックを受けてスタジアムの敷地に入り、メディアセンターへと進む。さらにメディアセンターからスタジアムにアクセスする間にこのリゾート感たっぷりのスペースが設けられている。
綺麗に切り揃えられた芝生にパラソルとソファ、そしてサッカーゲームがあり、報道陣たちの休憩のスペースとなっている。なにより野外に設置されているのが開放的だ。連日の取材で精神、体力的にも下降気味にある大会中盤でこうした場所があると、そのスペースを見るだけで心が和む。
それにしてもこの写真を見る限り、本来はここが中東の砂漠の国であると想像するのはなかなか難しい。アル・ジャヌーブ・スタジアムをはじめW杯で使用されている8つのスタジアムのうちハリファ国際スタジアムを除く7つが大会のために新設され、終了後は縮小、さらに解体されるところもある。取り壊すとは少し刹那的だと感傷に浸っても、巨大建造物の維持費を考えると現実路線で対処しなければならないのだろう。
大会も進みブラジル代表、アルゼンチン代表、フランス代表と優勝候補も順当に勝ち上がってきている。スタジアムとともに勝者、敗者の区別なくピッチで全力を尽くして戦っていた選手たちへの記憶は現地、あるいは世界中のあらゆる場所でこのW杯を堪能しているすべての人たちの心に刻まれ、いつまでも残り続けることだろう。
FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。