【W杯】日本代表の「次期監督問題」を考察 “森保体制の継続”は理想プランではない…モデルケースは「ポルトガル代表」
森保監督がやってきたような手法では、ファン・サポーターへの影響力は乏しい
そのうえで判断が難しくなるのは今回、森保監督が選手たちの経験をチームに集約させる形で、2大会連続でのベスト16を果たし、ひょっとしたらベスト8というところまでは行けたが、その方式をさらに続けていくのか。それとも日本代表としての戦術的なプレーモデルをある程度、固めながらアップデートさせていくのかである。筆者の考えは後者だ。
理由は日本代表というのはW杯での結果も大事だが、日本サッカーの指標としてJリーグや育成年代にも影響を与えるべき存在であるから。その点が現在の日本代表には欠けているのではないか。もちろん代表とクラブでは強化にかけられる時間も違えば、プロセスも異なるので、成熟度という意味ではクラブのほうが有利だ。
そうしたなかでカタール代表やサウジアラビア代表のように、準クラブ化して戦術理解や連係面を高めたチームが、日本より躍進できたわけでもない。ただ、海外組が中心になり、Jリーグからの招集がますます少なくなる可能性もあるなかで、日本のファン・サポーターがビジョンを共有して見守り続けられる存在になっていくには、この4年半で森保監督がやってきたような手法だと難しい。
もちろん選手は国内外のいろんなチームに所属しており、ひと口に欧州組と言っても経験している環境や戦術がバラバラであることははっきりしている。それでも代表のプレーモデルをしっかり持ったうえで、そこに選手たちがアジャストしていく部分、色んな環境でやっているからこそ持ち込めるアップデートの要素を合わせていくような方向性がベスト8というよりも、常に優勝を争うレベルで世界の強豪と渡り合っていくベースになると考えている。
それを可能にする指導者としてモデルケースになるのはポルトガル代表のフェルナンド・サントス監督のような存在だ。チームの継続的なベースを持ちながら、クリスティアーノ・ロナウドを筆頭に選手の個性をうまくつなぎ合わせて、継続性と柔軟性を併せ持つチームを作り上げている。
代表監督はどれだけ確固たる戦術を持っていても、それがトップダウン過ぎると、そこに合わないタレントが外れてしまったり、時には不要な確執を招いてしまうこともある。逆にボトムアップ過ぎても、選手間のすり合わせがチーム作りの中心になる以上、分かりにくい代表というのが続くことになる。
そうしたことも踏まえて、代表監督の経験があることが1つの条件にはなるが、そうでなくても継続性と柔軟性の両方を持っている監督ならば、日本代表を任せるには相応しいはず。当面、森保監督に継続してもらうというのは現実論としてあるかもしれないが、それが”逃げ”にならないことを願いつつ、見守っていきたい。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。