【W杯】C・ロナウドの“ラストダンス”はどうなる? スイス戦で先発外…垣間見た苦々しい表情
【カメラマンの目】決勝トーナメント1回戦で6-1と快勝も、途中出場したロナウドは見せ場を作れず
「もう撮影するのは止めろ」とフェルナンド・サントス監督が声を荒げながらカメラマンたちを制した。ポルトガル代表の集合写真のチャンスに見向きもせず、ベンチ側にカメラを向ける多くのカメラマンたち。レンズの先にはスイス代表戦で先発を外れたFWクリスティアーノ・ロナウドがいた。
チームの中心的存在を外すことは、サントス監督にとって大きな決断だったことは間違いない。実際にロナウドのプレーには冴えがない。だが、自分の決断がこれで正しかったかと、心の中に不安がなかったと言ったらウソになるだろう。ナーバスになるのも分からないではない。
しかし、結論から言うと90分後にサントス監督は自らの選択が正しかったことに安堵する。賭けに勝ったのだ。
ロナウドのいないピッチでポルトガルは前半17分、FWゴンサロ・ラモスのゴールを皮切りに次々と得点を重ねていく。次期エースとしての期待がかかるFWジョアン・フェリックスもロナウドの不在に奮起する。若干、エンジンのかかりが遅かったが、徐々にゲームの中心に入っていき攻撃のタクトを振るった。ポルトガルは終わってみれば後半13分に失点したものの大量6得点をスイスから奪取しベスト8進出を決めたのだった。
では、スタンドからのロナウドコールが鳴り響き、後半29分にピッチへと送り出されたロナウドはどんなパフォーマンスを見せたのか。残念ながらかつてのような強烈な光彩を放つことはできなかった。
全盛期はゴールゲッターとして、またチャンスメーカーとして圧倒的なスピードを武器に攻撃陣を強烈に牽引していた。相手守備陣を切り裂く高速ドリブルは無敵で、放つシュートも強烈。攻撃の万能選手として観客を魅了していた。
しかし、現在の代表ではチーム事情もあるのだろうがセンターフォワード(CF)としてゴール前での仕事に専念している。ポジション的にゴール前の総仕上げを託されているとはいえ、切れのある単独でのドリブル突破はめっきり影を潜め、前線でのプレーもこれといったインパクトを残すことはできなかった。
自らのプレーに納得できていないのは明らかで、チームは大勝したものの試合終了のホイッスルを聞いたときロナウドの表情には苦いものが滲んでいた。
この勝利でポルトガルはベスト4を賭けてモロッコ代表と対戦する。果たしてロナウドの先発復帰はあるのか。彼のプレーに頼ることなく、スイス戦で大勝したチーム状態を考えると、必ずしもロナウドが先発メンバーに名を連ねる必要はないように思うが、果たして指揮官はどう判断するのか注目させる。
(FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)
FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。