【W杯】PK戦“立候補制”は「全然あること」 元日本代表FW佐藤寿人氏が説明「選手と監督の間でズレも出てくる」
【専門家の目|佐藤寿人】広島時代の森保監督は「PKの準備を抜かりなくやっていた」
森保一監督率いる日本代表は、現地時間12月5日のカタール・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦。1-1の同点で延長戦を終え、PK戦の末に1-3で敗退した。元日本代表FW佐藤寿人氏はPK戦について「正解があるようでない」と語り、その難しさを解説している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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120分間を戦ってのスコアは1-1の同点だが、PK戦では残酷なコントラストが待っていた。GKドミニク・リバコビッチに3本を止められて1-3の敗戦。またしてもベスト8進出はならなかった。
佐藤氏は「あのロベルト・バッジョでさえPKを失敗して、W杯優勝を逃しています」と、1994年アメリカW杯決勝でのイタリアのレジェンドのPK失敗を引き合いに出し、PK戦の難しさに言及。サンフレッチェ広島時代から森保監督を知る一人として、そのアプローチを考察した。
「今回は決勝トーナメント1回戦でしたが、もちろんPKの準備はしてきているとは思います。広島でも森保監督時代には、PK戦の可能性がある公式戦の前には必ずと言っていいほど練習の最後にPKの準備を抜かりなくやっていました。もちろんスタートで出た選手、途中から入った選手も含めて、その時にピッチにいる選手が変わっていくので、最初から『誰が蹴る』『誰が何番目』と決めるのは難しい。あの場面で蹴りたい選手が蹴っていったということは、この世界では全然あることだと思います。
逆にキッカーを監督が決めるチームもありますが、選手と監督の間でズレも出てくると思いますし、何が一番かは、正解があるようでないと思います。これも含めて結果論ですね。試合後、森保監督がコメントしていましたが、運の部分もありますし、運だけでもない。キックのトレーニングはやってかなければいけないとも思います」
そのうえで、W杯決勝トーナメントという大舞台で“立候補制”でキッカーを務めた選手たちへの敬意も必要だ。佐藤氏は「やはりPKを蹴った選手を称えたい」として、自身の経験から次のように語っている。
「あれだけのプレッシャーがあるなかで、自らが『蹴る』と意思表示をしてキッカーに名乗り出た選手たちは、本当に素晴らしいと思います。GKも非常に良かった。いくら決められるコースに蹴り込んだとしても、それを上回る反応で防がれてしまうこともありますし、僕自身もリーグ戦でPKを止められてしまうことありました。それよりもPK戦までに試合を決められなかったこと。PK戦になった以上は、どちらに転んでもおかしくないですから」
そして、PK戦までに試合を決められなかったことを「選手と監督はずっと思い続けると思います」とチームの無念を推察。「この世界に生きている以上は、ずっとつきまとう問題です。もちろん、それに対して外側の自分たちも含めて、『何ができたんだろう』と言葉にしていくことは大事だと思いますし、それがサッカーインテリジェンスを全体で上げていくところにつながっていくと思います」と、サッカー界全体で取り組むべき課題として捉えていた。