【W杯|この試合この1枚】感情露わの表情に驚いた 森保監督の勝負へのこだわり伝染…さらなる高みへ導く指標になるか
PK戦直前の指揮官の見せた激しく鼓舞する姿
ワールドカップ(W杯)における未到達のベスト8を賭けてクロアチア代表と激突した日本代表。試合前、アル・ジャヌーブ・スタジアムのスタンドで多くの熱量を発していたのは日本のサポーターの方だった。その後押しを受けてサムライブルーは運命のキックオフを聞く。
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しかし、試合は静かに始まっていく。グループリーグとは違いノックアウトステージとなると次のラウンドに進むためには勝利が絶対条件になる。その反面、負けないことも意識せざるを得ない。
前半は日本、クロアチアとも相手の出方を伺うように静かな展開が続いた。だが同43分、前田大然のゴールが決まると試合は動き出す。後半に入るとクロアチアの仕掛けも活発になり、局地戦では激しい攻防も展開されるようになった。そして同10分、日本はクロアチアの攻撃に耐えられず失点する。
その後、一進一退の攻防が展開されスコアは動かず延長戦へと突入する。試合は再び膠着状態へ。日本は守備の意識を持ちながらカウンターからチャンスを待ったが、延長戦は両チームとも無理に勝負を決めに行く雰囲気ではなかったような気がする。そして迎えたペナルティーキック(PK)戦だ。
勝敗を決める最終段階となって円陣を組んだ日本。選手たちのあいだから森保一監督の顔を見えた。ハッと驚くような場面があったので慌ててシャッターを切った。それは森保監督が選手たちを驚くほど激しく鼓舞している場面だった。
森保監督は温厚な人物として知られている。ピッチ外だけでなく、内でも激しく感情を露わにすることは少ない。その森保監督が声を張り上げて選手たちに話しかけていた。その言葉の内容は分かるはずもないが、激しい表情から察するに、もはやPK戦における技術うんぬんではなく、勝利を目指す強い思いを示しているように見えた。
日本の選手も世界でプレーするのが当たり前になった現在、プロとして勝利に対するメンタリティはかなり向上していると思う。ただ、20代前半から人々か必ず知っているようなスタジアムに足を運び、強豪クラブチームをひと通り取材し、なによりブラジルサッカーを多く見てきたため、彼ら南米の大国の選手が持つ勝利に対する貪欲さを基準として考えてしまうと、日本サッカーに関わる人々の勝利に対する思いはまだ改善の必要があると感じている。
そうしたなかで森保監督が見せた、なんとしても勝利するのだという激しい感情を露わにした姿をファインダーで捉えたとき、表現方法として間違っているかもしれないが嬉しさを感じた。
そうなのだ。そうした熱い思いが日本サッカーをさらなる高みへと導くのだ。森保監督を中心に円陣を組んだ写真は、ここまでのW杯でもっとも印象に残る1枚となった。
FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。