監督に最も必要なものは何? オシムが考える理想のチームマネジメントとは
監督に最も必要なのはアイデア
──オシム監督時代のメンバー発表は、直前のJリーグの試合が終わってからで、いつも練習開始日の前日でした。
「誰かがケガをして、代わりに招集される選手の気持ちを考えてみたらどうだ。どうせ自分は追加なんだと思うかもしれない。それではチームがまとまらない。どうしても追加が必要な場合には、呼ばれただけでうれしいと思う若手を使えばいいが、選手は非常にデリケートな存在だ」
――なるほど、チーム・マネジメントは色々なことを考慮するのですね。
「指導者には、選手を観察する目、意見を聞く耳、コミュニケーションを取るための口など、さまざまな能力が必要だが、最も大切なのはアイデアだ。監督の仕事は相手チームとの知恵比べであり、同時に自分のチームの選手たちとの知恵比べでもある。練習や試合をよく準備すること。そして状況に対応する即興性、うまくいかなくなったときの修正力──挙げていけばキリがない」
──日本のファンにひとことお願いします。
「日本のサッカーは進歩している。私が代表監督になった2006年当時と比べてみても、まず、選手個々の水準がレベルアップしている。その上で、日本人の長所である機動力や組織性を活かしながら、バルサなど最先端のスタイルをめざそうという段階まで来た。日本代表が何試合か勝てなくとも、それは進歩する上での壁なのだ。辛抱強く応援を続けてやってほしい」
【了】
千田善●文 text by Zen Chida