監督に最も必要なものは何? オシムが考える理想のチームマネジメントとは
言葉のアドバイスだけで勝てるなら監督は楽な商売
──チーム・マネジメントは繊細なのですね。いったい、どこに原因が?
「それは外部からあれこれ憶測をしない方がいいだろう。チームの方向性や一体感、モチベーション、勇気などさまざまな要素がある。もちろんフィジカル・コンディションや戦術理解などサッカーそのものの練習ができていることが前提で、メンタルは最後の仕上げのようなものだ。試合を想定した練習がちゃんとできていないと、選手は頭の中がスッキリせず、悪循環に陥る」
──オシム監督は、独特の言い回しで選手にやる気を与えていました。
「言葉のアドバイスだけで勝てるなら、監督は楽な商売だ。長時間のミーティングをやればいい(笑)。実際には、次の対戦相手を研究し、それに見合った戦術やメンバーを考え、そこから必要な練習メニューを考える。それがあって初めて、言葉での指示が生きてくる。しかし、言葉だけの指示では選手はすぐに忘れる。トレーニングに代わる準備、訓練はない」
──オシムさんがジェフの監督時代には休みが少ないことで有名でした。
「休みは十分すぎるぐらいに与えていたと思うが(笑)」
──佐藤勇人選手がキャプテンとして、休みがほしいと言いに行ったとき、「明日の練習開始まで24時間あるだろう、それで十分ではないのか」と監督から言われて反論できなかったと聞いたことがあります。
「チームは生き物だ。戦術、フィジカル、モチベーション、対戦相手への恐怖心、自信など、さまざまなメーターが上がったり下がったりする。とくに試合に負けた後などネガティブな状況で休みを与えると、選手は最低48時間、あれこれ考え込んでしまう。休み明けにはフィジカルも落ち、メンタルも消極的になっている。取り戻すのに何倍もの時間がかかる」