【W杯】“ドーハの歓喜”再び 楢﨑正剛氏が語る勝因は「戦略が完全にハマったこと」
難しい状況をむしろ楽しんでいるようにすら見えるリバウンドメンタリティー
そして、第2戦・コスタリカ戦での黒星から中3日という状況で心配された精神面ですが、外から見ている以上にグループとして結束しているのでしょう。今の日本チームは一致団結して前へ進めている印象がとても強い。インタビューで自然と笑みがこぼれるように、難しい状況をむしろ楽しんでいるようにすら見えます。
メンバーの多くは普段から非常に厳しいプレッシャーに晒される日常を過ごしているはず。海外は日本以上に白黒がはっきりした文化ですし、ほんの少しのミスでも強烈にバッシングされます。サッカーなのでミスや敗戦は付き物で、それとどうやって付き合っていくかはとても重要。長友佑都選手や吉田麻也選手を筆頭に経験ある選手が1つの敗戦に動じない強いメンタルを体現し、チーム全体のリバウンドメンタリティーにつながりました。
次はいよいよ決勝トーナメントで、このステージに残っているのは強豪国ばかり。ですが日本が対戦相手にコンプレックスを抱くことはないでしょう。繰り返しになりますが、選手の多くは日常的に世界を相手に戦っているので立ち合い負けする心配はありません。何よりも優勝候補のドイツとスペインに勝利したわけですから、大きな自信を得た状態で戦えます。
次の対戦相手であるクロアチア代表の立場で考えると、日本はとても読みづらいチームのはず。メンバーもシステムも戦い方も、ここまでにいろいろな顔を見せてきたことが効果を発揮する。選択肢は間違いなく増えていますし、グループリーグ3試合を通して培ってきた経験も必ずや大きな武器になるでしょう。
過信はいけませんが、自信を持って戦ってもらいたい。そして日本代表はどんな時も、歴史を塗り替える意識と覚悟で戦うべきです。これまで、3大会(2002年日韓大会、2010年南アフリカ大会、2018年ロシア大会)でベスト16という記録を残していますが、すべては過去のこと。先人が築いた歴史や記録は、自分たちの代で塗り替えていく。それを合言葉に、新しい景色を見せてほしい。
藤井雅彦
ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。