【W杯】“ドーハの歓喜”再び 楢﨑正剛氏が語る勝因は「戦略が完全にハマったこと」

状況に応じて守備戦術を使い分けられたことも今の日本代表の強み

 ポイントは、前半8分にセルヒオ・ブスケツ選手からボールを奪って決定機を作り出したシーンです。ショートパス中心に攻撃を組み立てるスペインは自陣でも自信を持ってボールをつなぎます。基本的には引いてブロックを作っていた日本ですが、相手がバックパスでボールを下げて行けると感じた場面では最前線の前田大然選手を中心に二度追い、三度追いを敢行しました。そういった隙を見逃さない姿勢が、のちに大きな成果を生みます。

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 プレーヤー心理は本当に紙一重で、例えば序盤にプレスをかわされて自陣ゴール前までボールを運ばれてしまうと、次は恐怖心からアタックできなくなる。これを避けるためには中盤や最終ラインのリスク管理も重要で、そういった形でのピンチを招かないように戦えていたのも大きかったと思います。そもそもスペインのカウンターアタックにそれほど怖さはありませんでした。だからこそ同点ゴールの場面で、前田選手は積極的にプレッシャーに走れたのではないでしょうか。

 引いてスペースを消すことを徹底しつつも、ボールを奪えそうな場面では積極的にチャレンジする。状況に応じて守備戦術を使い分けられるのが大きな強みになっていて、ピッチ内でのコミュニケーションがスムーズな証です。

 加えて森保監督は5人の交代枠を活用しながら的確なメッセージを送っています。グループリーグの3試合を通して三笘選手の投入はアクションを起こす合図になりました。このスペイン戦では相手が左サイドにパワーをかけてきたところで冨安健洋選手を送り込んで蓋をし、最後は遠藤航選手をボランチに入れてゲームを締める。しっかりと対策を練っているから迷わずに手を打てますし、ピッチ上で戦っている選手も混乱しません。

藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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