【W杯】ドイツ代表を立て直した“建設的な批判” 守護神ノイアー「僕らはまだ生きている」

スペインFWモラタも称賛「ドイツは優勝候補に入ってくる国」

 ドイツのホッケー五輪代表監督として男女両方で金メダルに導いたマルクス・バイスがこんなことを言っていた。

「本当の意味でのチームとはプレッシャーやストレスに襲われる状況においても、自分たち共通の目的のためにそれぞれが自分の力を最大限発揮することができ、他人任せではなく、それぞれが自主的にチームのための責任を担うことをいう」

 フリック監督はまさに選手全員がそうなるようにマネジメントをしている。スペイン戦後のテレビインタビューで「フュルクルクがゴールを決めた後に2人は抱き合って喜んでいたが、どちらかがどちらかに感謝の言葉を伝えたりしたのだろうか?」という質問があった時に、こう即答している。

「どっちがどっちじゃないよ。大事なのは僕らがチームだということだ。今日のチームパフォーマンスはギガンティック。スペイン相手に失点した後に同点に持ち込むなんて、メンタリティーのすごさを感じずにはいられない。ピッチには確かな戦士たちがいた」

 日本戦の内容と結果、スペインという強豪相手、チームとしての成長。様々な要素が重なり、この日のドイツは1対1の競り合い勝率57%という好スタッツを記録。

 テレビスタジオ解説の元ドイツ代表DFペア・メルテザッカーは「まさにカギとなるところだ。鋭い出足で相手に余裕を与えなかった。多くの競り合いで勝利できた。コレクティブに前からのプレスでタイミングよくボールを奪い取り、いいチャンスにつなげることができたのは収穫だろう」とチームパフォーマンスの成長ぶりに賛辞を送っていた。

 中盤でパワフルかつダイナミックなプレーを見せていたレオン・ゴレツカも同調する。

「いい方向への一歩だと思う。非常に強いチーム相手にいい試合ができた。ピッチ上の競り合いで僕らはファイトした。みんなが戦った。これがなきゃ機能しない」

 スペインのアルバロ・モラタが「ドイツは優勝候補に入ってくる国だから」という発言を受けて、スタジオの司会が「ドイツ国内でよりも海外からのほうがドイツは評価されているのかもしれませんね」と話を振ると、元ドイツ代表MFクリストフ・クラマーは「何を言っているんだ」という感じで熱い思いを言葉にしていた。

「(モラタの発言に)驚きはないよ。もちろんそうだ。拍手が欲しいから言ってるんじゃないよ。日本戦だってそうなんだ。内容的には素晴らしかったじゃないか。あの試合展開なら何十試合に1試合負けるかどうかだよ。そして今日、非常に強いスペイン相手に素晴らしいプレー。今大会は間違いなくドイツ代表にとっていい大会になるよ」

 チームとしてのまとまりが生まれ、このW杯での基盤と戦い方が出来上がりつつドイツ。グループリーグを突破できれば、トーナメントをかなり勝ち進める可能性もあるかもしれない。とはいえ、現時点でドイツはまだグループEの4位。3戦目でコスタリカに勝っても日本対スペインの結果いかんではグループリーグ敗退となってしまう。果たして運命の3戦目の行方はいかに。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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