【W杯】元主審・家本氏が見たコスタリカ戦の印象 三笘、遠藤の“奮闘”に賛辞も「チームとして戦い方のコンセプトが…」
【専門家の目|家本政明】0-1敗戦した試合を振り返り、目立った2人をピックアップ
森保一監督率いる日本代表は、カタール・ワールドカップのグループリーグ第2節・コスタリカ代表戦を0-1で落とした。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏がこの一戦を振り返り、MF遠藤航(シュツットガルト)とMF三笘薫(ブライトン)に対し、独自の評価を下した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
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初戦で日本はドイツ代表に2-1で勝利。コスタリカ戦では、5人の先発メンバーを入れ替え、DF山根視来、MF守田英正、MF堂安律、MF相馬勇紀、FW上田綺世を送り込んだが、守備を固めたコスタリカを攻め切れない。エンド変わって後半16分には、ドリブルで仕掛けた遠藤がゴール前のいい位置でフリーキック(FK)を獲得するなど見せ場を作るも得点には結び付かなかった。
同17分には“切り札”の三笘を投入。サイドからの仕掛けでチャンスを演出していくが、同36分にコスタリカにワンチャンスを決められ失点。その後、何度か相手ゴールへ迫るシーンを作るも1点が遠く、日本は0-1で敗戦を喫した。
試合を通しての印象を家本氏は「コスタリカ戦は残念でした。チームとして戦い方のコンセプトがあまりはっきりとしていなかったかなと感じました」と総評。そのうえで、メンバー構成にも言及している。
「これは多くの人も思っているかもしれませんが、コスタリカ戦で勝てば決勝トーナメント進出へ大きく前進できたので、5人も先発を変えたのは意外でした。失点したあとも戦い方が明確になっていなかったように感じました」
ただ家本氏は、敗戦したものの後半途中からピッチに立った三笘には好印象のようだ。「攻撃は途中出場の三笘選手頼みになっていましたね。三笘選手に対しコスタリカ側はまったく対応できていませんでした。大きなチャンスを何度も作ってゴールに迫っていました。もっと早く出ていればとも感じましたし、やはり彼はゲームを変える重要な存在ですね」と随所示した才能を称賛している。
さらに、現在の“日本の心臓”と言われる遠藤についても言及。「試合を通して遠藤選手のプレーは相手に効いていました。ただ、お互いに様子を見るような試合展開で劣勢になる場面がそれほどなかったので、チームとして良かった面ではあったものの、いまいち輝き切れていない印象でした」と語り、遠藤の良さについても持論を展開している。
「遠藤の一番の良さはボールを奪取する能力の高さです。ボールを捌く、運ぶこと以上に守備力、奪う力が強い。コスタリカ戦では、その力が大きく発揮されるようなゲーム展開ではなかったのかもしれません」
試合を通して攻め切れず、膠着した状態でコスタリカに敗戦した日本。それでも攻守の面で要となっている遠藤、途中出場ながらも攻撃面でインパクトを残し続ける三笘には、大きな期待を感じていたようだ。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。