【W杯】「規律正しいとは自律を意味する」 ドイツ人指導者が語る日本の“強み”「学ばなければならない」
来日時のサッカークリニックでは片付けのスピードの驚き
僕がU-13、U-19で監督を務めるフライブルク郊外にある地域クラブSCホッホドルフの育成部長も、僕らの指導者チャットにまさに試合後の日本代表控室の写真とそれに関する記事をアップし、「これ素晴らしくないか?? 僕らもクラブとしてこうしたことをやろうじゃないか」というメッセージを送ってしてきた。W杯を通じて、互いにいいところを影響し合えるチャンスがある。素敵なことではないか。
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パプスト「自分の尺度では分からないことが世界にはたくさんあるんだ。例えば日本で驚いたのは、とあるテニスの人工芝でサッカークリニックをした時の話だ。テニスネットをどけてゴールを設置してトレーニングをするんだけど、『次のグループがくるから時間通りに終わらないといけないんです。だから3分前には終了して下さい』ってスタッフに言われたんだ。
私は『3分じゃ無理だろ?』と思ったけど、本当に3分で見事に元通りにしていた。全ての子供たちは練習が終わるや否や自分の荷物を片付けて、すぐに帰り支度を済ませていた。ドイツだったら考えられない。誰かしら水を飲んだり、靴ひもを結んでいたり、まだボールを蹴ろうとしている子がいたりするものだ。日本ではみんながやらなきゃいけないことを分かっている。そうした違いを私たちは見なければならない。なぜ日本があそこまで規律正しくプレーできるのかを知らなければならない」
「規律正しい」への傾向が強くなりすぎると、言われたことをやるだけの人間になってしまうと揶揄される。そして自分で考えることの大切さが議題にあがる。いつ、どこで、何を、どのようにすべきかを子どもたちが考える機会を持つことは極めて重要だ。強制や抑制がきつくなると、それは心の成長に問題をもたらすこともある。
でもそれがために、本来やるべきこと、やらなければならないことをやらなくてもいいとなると本末転倒になる。やるか、やらないかではない。規則正しさとは、自律して取り組む姿勢を身に着けるところに意味があるのではないだろうか。
「日本人のそうした姿勢に常に感銘を受けている」というパプストの話からはそんな大事なテーマについて考えさせられた。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。