【W杯】ドイツメディアで勃発した激論 日本に“弱点”突かれ…「守備の安定がない」「FWは?」
【ドイツ発コラム】日本に敗れたことによってテレビでも様々な意見が飛び交った
日本代表が現地時間11月23日、カタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ初戦でドイツ代表を2-1で下した。ドイツの人たちはどんな反応を見せていたのだろうか。現地からリアルな声をお届けする。
今回はドイツテレビで報じられた様子だ。
試合が終わったあと、テレビスタジオでは元ドイツ代表トーマス・ヒツルスペルガー氏、元女子ドイツ代表GKアルムート・シュルト氏が日本に負けた現実を一様に驚きをもって受け止めながら、その敗因について議論していた。
シュルト「65分間はドイツが完全に主導権を握っていた。でも日本代表監督はすごくいい手を出した。アーセナルでいいプレーを見せている冨安(健洋)を投入し、守備を安定させて、それから攻撃的な交替をどんどん切って、堂安(律)と浅野(拓磨)というカードがはまった。ドイツの守備の問題についてもあるけど、ただそれ以前に3~4点は取らないといけない試合だった」
ヒツルスペルガー「大会前にドイツの弱点について話がされていたけど、それよりも自分たちには優れた選手がたくさんいるとか、クオリティーがあるということについてばかり話があった。でもセンターFWは? 今日だってチャンスはあった。でもゴールを決めるような選手がいない。レバンドフスキやハーランドといったハイクオリティーを持ったFWがいない。そしてDFは? 単純なロングボール1本で失点してしまう。それだけでそれまでの取り組み全てが台無しになってしまった。浅野が速いのは分かるが、スピードの問題じゃない。戦術的な問題だ。トップレベルのセンターFWがいなくて、守備の安定がないチームがW杯優勝を口にすることはできない」
試合前から分かっていた弱点を日本に突かれて負けた。ドイツサイドから見て日本戦の敗因を最もシンプルに表すとこういうことになる。ドイツの問題点はかなり以前から指摘され続けている。守備が粗い。失点の仕方が良くない。それなのに対処法がないまま大会に臨んでしまった。元ドイツ代表MFで2014年W杯優勝選手のサミ・ケディラ氏はそこを痛烈に指摘する。
「後半自分たちで心臓部を明け渡してしまった。センターをコントロールできたチームがゲームをコントロールする。この言葉は理由もなく語り継がれてきたわけではない。ハンジ・フリック監督のことも取り上げなければならない。非常に評価している監督だが、今回のノミネート選手の中に守備的な中盤選手が欠けている。全ての可能性をカバーできる選手層だと言っていたが、今日は無失点で終えなければならない試合だった。多くの才能豊かな選手がいるが、誰も相手ボールに対してプレッシャーをかけられていない。ロングボールから失点というのはまさにそのシンボルのようなシーンだ。遠藤(航)はドイツの攻撃を遮断し、思うように支配することができた」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。