【W杯】ドイツ国内で感じた“地域愛”、日本の“大金星”をドイツ人指導者が語る 「堂安のゴールで流れが完全に変わった」

コーチと日本対ドイツ戦のサッカー談義に発展「ドイツにとって悪い試合だったわけじゃない」

 和やかな雰囲気でのトレーニングを終え、アシスタントコーチが運転する車で自宅まで送ってもらった。車内では週末の自分達の試合について話し合っていたけど、自然とテーマはまたしても日本対ドイツ戦へと戻る。

アシスタントコーチ(以降:コーチ)「ドイツにとって悪い試合だったわけじゃない。ボール保持率自体はそこまで重要ではないけど、ゲームの流れはつかめていたし、相手に攻撃の起点を作らせてもいなかった。1点目を挙げた後も好チャンスは多く作れていたし、2点目は時間の問題だと思っていたのに。堂安のゴールで流れが完全に変わった」

中野吉之伴(以降:中野)「いい試合だったというけどよかったのは70分頃まででしょ。でもサッカーは90分の試合だよ。終盤の失速はちょっと残念だったなぁ」

コーチ「シュロッターベックはフライブルク時代すごくよかったのに。身体を張った守備とか迫力があって相手FWを必死で食い止めるプレーを見て私も興奮したものだ。でもドルトムントに行ってクオリティが下がった気がしてしょうがない。あっさりと突破を許すシーンが多すぎる」

中野「日本にリズムが移りそうな時間帯だったから、あそこでゲームをコントロールできなかったかなぁ。あれだけ経験豊富な選手がたくさんいるのに」

コーチ「守備的なMFがいないと言うんだったら、ギンターをそこで起用すればいいんだ。今はCBだけど昔はボランチでプレーしていた選手で、今シーズンのパフォーマンスだったら、ほかのどの守備選手よりいいじゃないか。ギンターを起用して、あと終盤動きが消えてしまったラウムを下げてギュンターを入れていたら問題なかった。これは私がフライブルクファンだから言ってるんじゃないよ(苦笑)。本当にそう思うんだ」

 しばらくそんな感じでサッカー談義をしていたら車が僕の家に到着した。挨拶をして、降りようとする僕にコーチが笑って声をかける。

「キチ、今日は飲みすぎるなよ」

僕も笑って返す。

「今日飲まなくて、いつ飲むの?」

「そうだよな。いい酒を飲んでくれ」と笑顔で手を振ってコーチが帰っていく。彼らの祝福をありがたく受け止めながら、ドイツビールで1人祝杯を挙げた。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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