「僕には僕の美学がある」 青山敏弘、初のW杯で痛感した経験値不足と貫いた“広島愛”
黒星スタートで「日本らしい崩し」を欠いたギリシャ戦
W杯はグループリーグの初戦が何より大切だ。フランス大会とドイツ大会はいずれも敗戦。そして日韓大会と南アフリカ大会は勝利。この差が決勝トーナメント進出の可否につながったことは明確で、わずか3試合しかないリーグでの初戦敗退がいかに厳しいか、誰もが分かっていた。
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「(次のギリシャ戦は)とにかく勝たないといけない。チームとして攻撃的に行こうという空気には満ちていた。コントロールして闘うのは日本代表の良さでしたが、そんなことは言ってられない。メンタル的には『勝たないといけない』という空気だった」
アルベルト・ザッケローニ監督は先発から香川真司(現シント=トロイデン)を外して大久保嘉人を入れ、岡崎慎司(現シント=トロイデン)、大迫勇也(現ヴィッセル神戸)を含め前線にストライカー色の強い3人を置いた。だがコンスタンティノス・カツラニスが37分に退場したことでギリシャが「勝ち点1」狙いに転換した。彼らも初戦、コロンビアに0-3と完敗しており、ここで日本に苦杯を喫するようでは敗退が決まってしまう可能性もあったからだ。
ただでさえ守備が堅いギリシャにゴール前を固められた時、日本はどうやって点を取るか。ザッケローニ監督は香川や遠藤保仁(現ジュビロ磐田)を投入し、内田篤人らを中心としたサイドアタックで活路を見出そうとしたが、ゴールできない。
結果は0-0の引き分け。ザッケローニ監督は「欠けていたのは、アイデアやパスの変化。特に最後(ゴール前)は発想が欠けていました。いいところもありましたが、スピード、特に最後のスプリントが足りなかった」と記者会見で語った。それは本田の「正直にボールを上げるだけでは、相手に勝つには難しい状況。違う形でゴールを破るアイデアが欠けていました」という言葉ともリンクしていた。
青山も同じような感想を持っていた。
「1人多くなって、どうやって点を取るのってなった時の選択肢ですよね。クロスから点を取って勝てれば、それは全く問題ない。そこは結果論ですからね。ただ、もうちょっと日本らしい崩しというか、ペナルティーエリアの中に入ってからのコンビネーションで崩しっていうのは、もっと出したかった」
中野和也
なかの・かずや/1962年生まれ、長崎県出身。広島大学経済学部卒業後、株式会社リクルート中国支社・株式会社中四国リクルート企画で各種情報誌の制作・編集、求人広告の作成などに関わる。1994年からフリー、翌95年よりサンフレッチェ広島の取材を開始。以降、各種媒体でサンフレッチェ広島に関するリポート・コラムなどを執筆。2000年、サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』を創刊。著作に『サンフレッチェ情熱史』『戦う、勝つ、生きる 4年で3度のJ制覇。サンフレッチェ広島、奇跡の真相』(ともにソル・メディア)。