南野拓実の“トップ下85分間プレー”は「不可解だった」 日本代表OBが指摘「あそこまで引っ張るのではなく…」
【専門家の目|金田喜稔】南野が後半40分までプレー「本番でどこまで機能するか」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランク24位)は11月17日、UAEのドバイでカナダ代表(同43位)と国際親善試合を実施。カタール・ワールドカップ(W杯)に向けた最後のテストマッチで1-2の逆転負けを喫した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、トップ下で先発して後半40分までプレーしたMF南野拓実(ASモナコ)の起用法について、「その意図が読めなかった」「不可解だった」と振り返っている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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カナダ戦では4-2-3-1システムを採用し、2列目のトップ下に南野が入り、左にMF久保建英(レアル・ソシエダ)、右にMF相馬勇紀(名古屋グランパス)が並んだ。MF柴崎岳(レガネス)のパスから相馬が合わせて先制ゴールを奪ったものの、最終的に1-2と敗戦。金田氏は「攻撃のバリエーション、コンビネーションに関しては、依然として不安が残る。これは今に始まったことではない。そのなかで気になったのはトップ下だ」と指摘した。
「南野がトップ下で先発出場し、この日はあまり機能しなかった。そのなかで後半40分までプレーさせていたが、その意図が読めなかった。さまざまなシミュレーションを行うなかで総合的に判断し、鎌田をボランチでテストしたのは理解できる。その一方、トップ下の南野をあそこまで引っ張らず、久保をトップ下にスライドさせる形を試したほうが良かったのではないか」
トップ下で本領を発揮できなかった南野だったが終盤までプレー。この起用法に注目した金田氏は、「例えば、後半からトップ下に久保を置き、右サイドに堂安、左サイドに相馬という形を試すこともできたはずだが、それを試さなかった。つまりトップ下の序列としては、鎌田が1番、南野が2番ということなのだろう」と分析している。
南野のトップ下起用は機能不全に終わり、「ほぼ消えていた」と表現した金田氏。そのパフォーマンスに不安を覚えたなかで、終盤まで起用された点に疑問を投げ掛けた。
「南野をトップ下で起用したこと自体は問題ないが、カナダ戦の南野の出来を踏まえると、本番でどこまで機能するか不透明。であれば、あそこまで引っ張るのではなく、久保のトップ下もチェックしても良かった。特に久保と堂安はお互いを分かっているし、近い距離感に置くと流動的にポジションも変えながら打開を図れる。すでに把握しているということなのかもしれないが、南野を85分間プレーさせたのは不可解だった」
ドイツ代表、コスタリカ代表、スペイン代表とW杯グループリーグで対戦するなか、どんな起用法を見せるのか注目が集まる。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。