10番・南野拓実だけ「何もなかった」 カナダ戦でアピール失敗、W杯での起用に日本代表OBが黄信号
【専門家の目|栗原勇蔵】トップ下で結果を残せず、鎌田とのポジション争いは苦境に
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は、11月17日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで行われた国際親善試合でカナダ代表(同41位)に1-2で逆転負けを喫した。トップ下で先発出場したMF南野拓実(ASモナコ)は決定機がありながら、結果を残せずに途中交代。元日本代表DF栗原勇蔵氏は、「チャンスを決め切れないと存在価値が薄れる」と厳しく評価している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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脳震とうで回復明けのMF遠藤航(シュツットガルト)、左ふくらはぎに違和感を覚えたMF守田英正(スポルティング)がカタールの首都ドーハに残って調整、MF三笘薫(ブライトン)は体調不良で合流が遅れ、今年に入って故障が続いているDF冨安健洋(アーセナル)もカナダ戦は欠場となった。
そのなかで、森保監督はDF板倉滉(ボルシアMG)、MF田中碧(デュッセルドルフ)、FW浅野拓磨(ボーフム)と故障明けの選手をスタメン起用。2列目には右サイドにMF相馬勇紀(名古屋グランパス)、トップ下に南野、左サイドにMF久保建英(レアル・ソシエダ)を送り込んだ。
試合は前半9分、MF柴崎岳(レガネス)の浮き球のスルーパスに相馬が抜け出し、ワンタッチでゴールを決めて幸先良く先制点を挙げた。しかし、前半21分にセットプレーから同点に追い付かれ、後半アディショナルタイムには途中出場のDF山根視来(川崎フロンターレ)がペナルティーエリア内でファウルを犯してPKを献上。GK権田修一(清水エスパルス)がPKをストップしきれずに勝ち越しを許し、1-2で敗れる結果となった。
トップ下で後半40分までプレーした南野は、同14分に柴崎の縦パスをFW上田綺世(セルクル・ブルージュ)がダイレクトではたいたボールをペナルティーアーク後方で受けてシュートチャンスを迎えたが、しっかりとミートすることができず。チャンスに絡む機会は少なく、トップ下として、「10番」としては物足りない結果に終わった。
元日本代表DF栗原氏は、「ワンチャンスで決めればいる価値がありますけど、チャンスを決めきれないと存在価値が薄れる」と、南野がポジション争いで厳しい状況に追い込まれていることを示唆した。
「4-2-3-1システムにおいて、基本的にトップ下は鎌田大地(フランクフルト)がファーストチョイスで、おそらく外れることはない。トップ下しか使う場所がない南野にとっては厳しい状況です。(イングランド1部)リバプールに所属していたこともあって対戦相手に名前が知られている分、ほかの選手よりもマークが厳しいのは事実です。でも、カナダ戦で言えば、試合には負けたとはいえ、上田がキープで存在感を発揮したり、久保が攻撃でキレのある動きを見せたり、怪我明けの浅野も“試運転”は完了したなかで、南野だけが何もなかった印象。10番として物足りなさは残ります。この状況でチームがW杯であっさり負けてしまったら、戦犯にされても不思議はない。今のままでは、そもそも試合に出ることなく終わってしまう可能性も否めませんけどね」
ライバルの鎌田が好調をキープしているなかでは、南野はW杯でも劣勢と言わざるを得ないようだ。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。