今回のメンバー選考でかすんだアギーレ監督の「哲学」 問われる日本サッカーの方向性
ブラジル相手にも独自の選手起用を貫いたアギーレ監督だが……
監督は各々、独自の「哲学」を有しているケースが多い。世界最高峰の指揮官と言われるジョゼ・モウリーニョ、ジョゼップ・グアルディオラ、時代を遡れば、今のバルセロナの真骨頂であるポゼッションサッカーを確立したヨハン・クライフなどが明確な哲学を掲げる監督の代表例である。
そもそも「哲学」とは何なのだろうか。広辞苑によると、ビジネスにおける哲学とは、「各人の経験に基づく人生観や世界観。また、物事を統一的に把握する理念」。要するに、その内容が正しいか否かは関係なく、一貫されていることで成立するポリシーである。
その点からすると、前日本代表の監督アルベルト・ザッケローニも、格上相手に対しても攻撃的な姿勢を貫く「哲学」をもって日の丸を背負っていたといえる。W杯ブラジル大会でも、結果こそ散々たるものであったが、メンバー選考でも守備的なポジションを1人削ってでもFW大久保を選出した。それが良いか悪いかは別にして、どんな状況でも攻撃的な姿勢は崩さないというメッセージを発信していた。その哲学を選んだこと自体に賛否両論はあるだろうが、「ザック・ジャパン」には、少なくとも4年間というスパンで見れば、明確なアイデンティティーが存在していた。
それでは、今夏、晴れて新代表監督として就任したハビエル・アギーレ率いる現在の日本代表はどうだろうか。
「将来性があり、代表チームに入ることに意欲的で国を背負う気持ちがある者で、チームプレーで試合に貢献できる選手を選びたい」
就任会見でこう口にしたアギーレ監督。その言葉通り、9月序盤に行われた新代表初試合となるキリンチャレンジカップの2試合では、FWの武藤、皆川、MFの森岡、DFの坂井、松原など、若きプレイヤーのサプライズ招集が実践されていた。結果は1分1敗と振るわなかったが、将来性がありインテンシティーな姿勢を貫く選手を起用していくという、明確な「哲学」を指揮官は披露したのである。
そして、10月14日のブラジル戦。親善試合といえど、サッカー王国と対戦するまたとない機会であり、今の日本の底力を把握できる最大のチャンスであった。しかし、アギーレ監督は先発でMFに田口、森岡、FWに小林を送り込み、一方で本田らはベンチスタート。現時点での最大限の戦力で勝利を目指すのではなく、将来を見据えて若手に経験を積ませる、あるいは選手の力を見極めるという意図が色濃く出た。
結果として0-4と大敗。各方面からブラジル戦に関してはベストメンバーで臨むべきだったという声も多く上がった。しかしながら、就任から4試合で1勝1分2敗と、出鼻を大きく挫かれたものの、強豪相手でも将来性ある若手プレイヤーで勝負するという、アギーレ監督の「哲学」がそこには表れていた。
しかし、状況は変わった。