日本代表、W杯スペイン戦で「必ず回避しなければならない」ポイントは? ドイツ戦との違いと付け入る隙…2人のキーマン次第か
【識者コラム】ルイス・エンリケ監督が率いるスペインは従来のスタイルを踏襲
カタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ最終戦のスペイン代表戦は、その時に両チームがどういう状況かに左右される。ただ、スペインに関しては状況いかんに関係なく、ほぼ戦い方は同じだろう。
ルイス・エンリケ監督が率いるスペインは従来のスタイルを踏襲している。これについては頑固といっていいぐらいで、ボール支配とハイプレスの循環を堅持してきた。そして得点源となるストライカーの不在も従来どおりだ。
2008年のユーロに始まって、2010年W杯優勝、ユーロ2012の連覇までがスペインの黄金時代だった。とはいえ、ダビド・ビジャとフェルナンド・トーレスがいたこの時期でさえ、いつも大量得点で勝っていたわけではなく、優勝した南アフリカW杯でもノックアウトステージは1-0の連続という「攻撃するカテナチオ」だった。それだけボール保持力が強く、1点取ればあとは相手に攻撃の機会をほとんど与えないままで試合を終えることができたわけだ。
この黄金時代以前のスペインはプレースタイルが定まっていなかった。1970年代はカウンター型だったし、80年代はレアル・マドリードの攻撃陣を中心に組んだかと思えば、90年代はバスク風の堅守。そうした試行錯誤に終止符を打ったのが2008年のティキ・タカと呼ばれたパスワークだった。
シャビ・エルナンデス、ダビド・シルバ、セスク・ファブレガス、アンドレス・イニエスタのクワトロ・フゴーネスのMF陣は自分たちがボールを保持することを前提にした人選だ。相手の攻撃を防ぐにはパワー不足が明らかだったからだ。自分たちの長所に特化したスタイルで栄光を築き、それがかなり理詰めのパスワークでもあったため、変更するつもりはさらさらないし、変更しようとしても簡単ではないのだ。
ルイス・エンリケ監督がファーストチョイスとしているバルセロナのMFトリオ(ペドリ、ガビ、ブスケッツ)も攻撃に特化した3人であり、徹底したボール保持が前提である。一方、FWには得点を量産できそうな選手がいないのも同じだ。そこで現在のチームが力を入れているのがハイプレスである。圧倒的に押し込めるので、高い位置からプレスして敵陣で奪えば崩す手間も省けるし、より良い形でフィニッシュできるという狙いだ。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。