「ミトマをベタ褒めしたよ」 ブライトン三笘に大喝采、サッカー発祥国で異例の注目度…英国での“リアル評”とは
【英国発コラム】躍動を続ける三笘薫、直近3試合に対する現地の反応にフォーカス
スタジアムのアウェー席は通常、後半にホームチームが守るゴール裏に設けられるものだ。ところが、現地時間11月9日に行われたリーグカップ3回戦のアーセナル戦で応援に駆け付けたブライトンのサポーターたちは、ゴール裏ではなく左隅の角に扇型で陣取った。
だから、三笘薫が後半頭から4-2-3-1の2列目左サイドで投入されると、日本代表MFはブライトンサポーターのエリアから最も近い選手になった。
驚いた出来事がわずか2分に起こった。それはこの試合で三笘に初めてボールが渡った時のこと。数千人が揃って発した「うおっ!」という唸り声がエミレーツ・スタジアムの夜空にこだましたのだ。日本人MFに対するサポーターの期待の大きさが表れた瞬間だった。
1-1で迎えた同13分、三笘がこの試合の決勝弾となるブライトンの2点目を決めた瞬間、エミレーツ・スタジアムの左隅のスタンドは、まさに蜂の巣をつついたような騒ぎに。人の波が激しく上下に揺れ、ブライトンサポーターたちの喜びが爆発した。
三笘は、そんなファンの雄叫びに引き寄せられるかのように、ピッチとスタンドを仕切るフェンスを軽々と飛び越え、喧騒の前列に走り込んだ。
「ボールを受けた時は、カットインしてファー(サイド)っていうのは、ほぼ決めていました。(観客席に飛び込んだのは)あんなに喜ばれると、やっぱり行きたくなる気持ちもあります」
試合後、ブライトンの地元メディアである「サセックス・ライブ」のリッチー・ミルズ記者が話しかけてきた。
「ブライトンサポーターたちのSNS上でミトマが大変なことになっている。ものすごい愛され方だ。本当に大絶賛の嵐だよ」
これまでにも2013年3月2日のノーウィッチ戦でマンチェスター・ユナイテッドの香川真司がハットトリックを記録した場面をオールド・トラフォードで見た。2016年3月14日に行われたニューカッスル戦でレスター・シティの岡崎慎司がオーバーヘッドで虎の子の1点を奪い“奇跡の優勝”に爆進する足がかりとなった試合も現場で目撃している。
とはいえ、日本が誇る“2人のシンジ”も世界最高レベルのイングランドでゴールに3試合連続で絡み、勝利に貢献する活躍を見せたことはなかった。
ところが三笘はそれをあっさりと成し遂げた。プレミアの取材も今季で22シーズン目になるが、日本人選手がイングランドの1部リーグでここまでのインパクトを残した記憶はない。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。