フライブルク堂安律、なぜ疲れていても起用されるのか? 選手として果たすべき責任とプレーで示した「大丈夫」

監督から「疲れが見えてるのは分かっていた」 起用から見える堂安への高い評価

 多くの試合に出ていたら、感触的に大丈夫と思っていても、いざ試合となったら「あれ? 今日は身体が重いな」ということだってある。それはそうだ。今季すでに公式戦20試合に出場しているのだ。

 10月27日のELグループステージ第5節オリンピアコス戦(1-1)がそうだった。プレーが重く、本来だったらゴールへ向けてドリブルを開始するような局面でもクロスを入れたり、仲間へパスを預けたりとらしくないプレーが続いていた。らしくないと言えばらしくない。本人も認めていた。

「最初の10分ぐらいで自分がどうなのか感覚が分かる。今日は最初の感覚で、身体が重いなとか、疲れているなというのがあった。なんとか賢くというか、プレーしなくちゃいけないなと思いながらも、正直あまり打開できなかったので、課題が出た試合だったと思います」(堂安)

 いつもは堂安が右サイドでボールを受けて攻撃の起点を作るシーンがよく見られるが、この日はいい形が生まれてこない。攻撃も左サイドに偏りがちになってしまう。結局この試合では後半18分に途中交代となったが、シュトライヒ監督はベンチに戻ってくる堂安の肩を抱き、熱い口調で言葉をかけているのが印象的だった。

「特別な話はしてないですけど、ただハーフタイムに監督から『疲れが見えてるのは分かっていた』っていうのは伝えられていたので、そういったような話ですね。特にポジティブな声をかけてもらいました」

 疲れがあるのは分かっていたが起用する。後半15分過ぎまで出場させるのは信頼と期待の表れ。そしてその信頼と期待とは、今までの練習や試合でのパフォーマンスがあるからこそだ。

 たとえ疲れていてもやるべきことはさぼらずにやり続ける。守備で正しいポジションを取り、連続でプレスをかけ、開いたスペースへ走り込む。それを効果的に行えているからこそ、スタメンに名を連ねている。「大丈夫」というのは言葉で返すのではなく、プレーで示すことがやはり大切なのだろう。それが選手として果たすべき責任だ。

 オリンピアコス戦から中2日で迎えたブンデスリーガ12節のシャルケ戦(2-0)でもスタメン出場した堂安は開始2分にシュートを放つなど、精力的な動きで攻撃に関与し続けた。先制点の場面では堂安らが右サイドで起点を作り、左サイドで待つヴィンチェンツォ・グリフォへパスが渡ったところから生まれた。2点目でも堂安が左サイドへ流れてチョン・ウヨンをサポートしたところからPKへとつながった。

 さまざまな経験を積み重ねながら成長し続ける堂安。ブンデスリーガ中断までにゴール・アシストも重ねて、気持ち良くW杯へ向かいたいところだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

page1 page2

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング