フライブルク堂安律、なぜ疲れていても起用されるのか? 選手として果たすべき責任とプレーで示した「大丈夫」
【ドイツ発コラム】信頼を感じている堂安「監督が求めてくれれば僕も返す気持ちでいる」
カタール・ワールドカップ(W杯)日本代表に選出されたMF堂安律がプレーするドイツ1部フライブルクは、今季UEFAヨーロッパリーグ(EL)への参戦で過密日程を戦うことになりながらも、大幅なローテーションは行わずにここまでやり繰りしている。
ほぼ毎週のように2試合ずつ戦い、さらにどの試合でも序盤から高いインテンシティー(プレー強度)が求められ、運動量やダッシュの数も極めて多い。時には疲れが見える試合だってある。「さすがに次の試合では数人休ませるのではないか?」とファンや地元メディアが予想しても、ふたを開けたらスタメンそのままという試合は少なくはない。
クリスティアン・シュトライヒ監督は主力選手に無理をさせているのだろうか?
そうではない。選手に怪我をするまで無理をしろと言っているわけではない。シュトライヒは選手の声を正しく聞こうとしている。こんな話をしていたことがあった。
「(出場メンバーに関しては)コーチ陣みんなで決めている。我々は選手の様子を正しく見ようと常にチェックをしているし、疲れているなと思ったら話をする。選手を完全に信頼している。そして、『選手が正直に自分の気持ちを話すことができるのか』『エゴからではなくて、チームへの思いや強い意志から出てくるものかどうか』を見定めている。選手にとっては難しい話だろう。だが私は選手を信頼して話を聞くようにしている」(シュトライヒ監督)
選手のフィジカルデータは丁寧に取っている。休養プログラムにも気を配る。怪我の危険性がある選手をピッチに送ったりはしない。そのうえで選手自身がどんな感触を持っているのかを大事にしているという。堂安もそんな監督からの信頼を実感しながらピッチに立っている。
「監督からの信頼は感じていますし、監督が求めるものは自分も分かっているので。コミュニケーションを取っていますし、僕も信頼しています。監督が求めてくれれば僕も返す気持ちでいるので。いい関係は築けているかなと思います」(堂安)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。