日本代表の“長所が出やすい”ドイツ戦 W杯グループ初戦は格上も「やりにくい相手ではない」
【識者コラム】日本のW杯グループ初戦、ドイツ戦の攻略ポイントを考察
カタール・ワールドカップ(W杯)も間近に迫ってきた。日本代表はドイツ代表、コスタリカ代表、スペイン代表とグループリーグで対戦する。
W杯では初戦が大事だとよく言われる。緒戦がすべてと言い切る元代表選手もいる。本来は1戦目ではまだ何も決まらないので、最も影響があるのは2戦目であり、コスタリカ戦が日本の命運を握る試合になると思うのだが、精神面に緒戦が及ぼす影響はそれだけ大きいのだろう。
ドイツが日本より格上なのは間違いない。ただ、さほどやりにくい相手ではないと思う。日本にとってやりにくいのはむしろコスタリカだ。厚く守ってカウンターを狙ってくるコスタリカは相性からいえば日本にとって最もやりにくいタイプである。さらに3ポイント取らなければならない試合なので、引いた相手を崩すのが苦手な日本としてはなおさら重圧がかかりそうだ。
とはいえ、やはり注目は初戦である。ドイツ戦で日本が避けなければいけないのは自陣でボールを失うことだ。逆にやるべきなのは敵陣でボールを奪うことである。
自陣で簡単にボールを奪われることがなければ、日本の守備陣はそんなにやられないのではないか。親善試合とはいえ、ブラジル代表を相手にしても失点はPKによる1点だけだった。もっと失点してもおかしくない場面もあったが、事実として1失点に抑えている。ドイツの攻撃はブラジルほど多彩ではない。分厚く守られるとミドルシュート、ハイクロスといった強引なアプローチに頼りがちであり、少なくともブラジルよりは守りやすい。
危ないのは自陣でボールを奪われること。そして、ドイツが狙っているのもそこなのだ。奪われてもすぐに奪回できるような攻め方をしていて、敵陣でのボール奪取からの素早い攻め込みを明確に狙っている。これを回避できなければ日本は大差で敗れるだろう。とにかく自陣ロストを回避するため、開始から5~10分間は安全第一ですべて大きく蹴り返してもいいぐらいである。ただ、ずっとそれでは完全に一方的な流れになり、いくら守備に自信があっても持ちこたえられなくなってしまう。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。