原口所属ウニオン・ベルリンの“ヨーロッパ行脚”にファン熱狂 興覚め感は皆無…スタジアムに鳴り響く「サッカーの神!」の声
バルサを一蹴したフランクフルトに続き、ウニオンがセンセーションを起こす可能性も
ブンデスリーガで対戦する相手は分析データも豊富にあるし、対戦経験もそれぞれ多い。リーグ全体にある傾向というのもある。だから、どんなプレーをしたらいいのかという共通認識をより明確に選手も指導者も持っている。
だが初めて対戦する相手とはそれがない。例えばホームでのマルメ戦。3バックでのボール保持時に2ボランチ+2トップ下の布陣で中盤センターを厚めに形成することで、ウニオンがプレスをしかけても、じっくりじっくりとパスを回して外してくる。本来だったら縦に展開してくるタイミングでもつないでくる。ボールを奪い切るタイミングやリズムを掴み切れずにいたウニオンは勢いにブレーキがかかってしまい、ポジショニングが曖昧となり、結果としてピンチになりかけたシーンが少なからず出てきてしまう。
この試合右インサイドハーフでスタメン出場していた原口は、そうした試合展開をどのように捉えていたのだろう。
「相手に中盤で数的有利を作られて、上手く奪い切れなかったのはそうだと思います。でも、強度を上げることでそれを片付けられたのが後半だったかなと。ハーフタイムの指示的に(強度が)『足らない、足らない』ということだったんで。
相手が中盤に人数かけてきて、はがされるシーンもあったんですけど。勇気を持ってプレッシャーかけに行くことが大事だと思うし、それをやるだけの強度が僕らにある。
特にヨーロッパの時は相手も各国上位チームなので、ある程度自信を持ってボールをつないできたりするチームが多い。そういう時に1枚2枚剥がされると、一気に(ゴール前まで)戻らないといけないですし、そうなると僕らの良さは出ない」
ウニオンにとっては未知の世界が広がっている。だからこそ、そこでの戦いには成長のヒントがたくさん転がっているはずだ。ブンデスリーガで上位を走るだけではなく、EL初出場でもグループステージ最終節でロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)を1-0で下し、2位での突破を見事に決めた。昨季挑戦したUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)ではヨーロッパサッカーへの経験不足が散見され、グループステージで敗退したことを考えると、わずか1年で確かな順応力と打開力を身に付けたと言えるだろう。
2位突破となったことで2月にはCLグループステージ3位でELに回るクラブとのプレーオフを戦う。対戦相手候補にはFCバルセロナ、ユベントス、アヤックスといったCL優勝経験クラブさえも名を連ねる。これまでELで対戦してきたクラブとはクオリティーが違うかもしれない。だが昨シーズンのELではフランクフルトがバルセロナを一蹴した。ウニオンがそんなセンセーションを起こす可能性だって十分にある。
どこが相手となろうとも、ウニオンも、原口も、ファンの熱狂的なサポートを受けて、全精力で立ち向かう。ウニオンはここからさらにヨーロッパを行脚していくのだ。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。