横浜F・マリノス番記者が選ぶMVPは? 卓越した打開力で3季ぶりリーグVへ貢献、“アンタッチャブル”なアタッカーを選出
上田綺世をシャットアウト、力強さを増したDF角田の活躍も印象的
■陰の功労者
角田涼太朗(DF)
今季リーグ成績:18試合0得点
昨夏に当初の予定を前倒してプロ契約を締結したものの、実質的には今季がルーキーイヤーと言っていい。
開幕当初はセンターバック(CB)のバックアッパーという立ち位置に甘んじていたが、負傷やコロナ陽性といったアクシデントに見舞われた状況下で、3月6日の清水エスパルス戦(2-0)で先発デビューのチャンスが巡ってくる。すると力強い守備と左利きの特性を生かしたビルドアップで存在感を発揮し、たちまちレギュラー争いに加わった。
甘いマスクからは想像できないほど肉弾戦を厭わず、外国籍FWにも果敢に立ち向かっていった。攻守ともにベクトルを前方向へ維持する横浜FMのスタイルにもしっかり合致し、場数を踏むごとに力強さを増していく。
角田にとってのハイライトは、あのFW上田綺世(鹿島アントラーズ→セルクル・ブリュージュ)をシャットアウトして3-0の勝利をもぎ取った4月10日の鹿島戦だろう。大学時代からマッチアップしていた日本人屈指のストライカーに対して一歩も引くことなく徹底抗戦で迎え撃つ。わずかな隙があればボールを奪いにかかり、横浜FMの攻撃回数を増やした。
本職のCBだけでなく左サイドバック(SB)でも起用され、シーズン終盤は反対の右SBでもプレー。あくまでもオプションという位置付けで本人は「CBで勝負したいという思いがある」と本音を隠そうとはしないが、苦しい台所事情のチームにおいて貴重な役割を果たした。
数年後は守備の要として最終ラインを統率する選手だろう。さまざまな経験ができた末にリーグタイトル獲得に貢献した2022年シーズンは、角田にとって忘れ難い記憶として刻まれたはずだ。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)
藤井雅彦
ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。