元Jリーガーから農家へ転身、次の仕事場は畑と田んぼ 異業種の若手5人で事業立ち上げ「こんなに働いたのは人生で初めて」

農業体験会に訪れた親子に丁寧に説明する西澤代志也【写真:河野正】
農業体験会に訪れた親子に丁寧に説明する西澤代志也【写真:河野正】

地元に帰省「両親はおいしいを連発し、一番反対していたおばあちゃんが喜んでくれた」

 クラウドファンディングのお礼として種まき、苗植え、収穫、野菜プロデュースといった農業体験があり、どのコースも親子連れが多く、主導役を担うのが西澤だ。

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 高校1年から栃木のサポーターで、西澤の熱烈なファンだった清水は「代志也さんは沖縄SVでスクールをしていたので、子供の接し方に慣れているんですよ」と話し、「これをやるんだと決めた時の集中力は本当に凄い、絶対にやり遂げますから」と感心する。

 稲刈りも終わり、9月20日から新米の販売が始まった。鬼怒川の水で育った宇都宮産コシヒカリ100%の玄米だ。農業を生業にしてまだ半年だが、西澤はしっかりと足もとを見つめる。「今はJリーグ経験者、現役の人気プロバスケットボール選手がいることで関心を示してくれる人も多いと思うが、純粋に味だけを追求しているお客様もいるはず。それに応えられるものを提供していかないといけない」と、すっかりプロ農家のたしなみなのだ。

 遠い将来の具体的な構想はないが、農業とサッカーを組み合わせた活動をぼんやりと思案する。

 父親の郵便局を引き継ぐ意思はもうない。家族全員の不興を買ってしまったが、自分で決めた道だ。

 この7月、母・久子さんの誕生日にとうもろこしを土産に帰省した。「両親はおいしいを連発し、農業に一番反対していたおばあちゃんがすごく喜んでくれて、渡した瞬間に皮をむいて食べてくれたんです」。

 こう言った西澤の顔には、浦和でプロ初得点を決めた時のようなありったけの笑顔が広がった。

(文中敬称略)

[プロフィール]
西澤代志也(にしざわ・よしや)/1987年6月13日生まれ、埼玉県出身。浦和レッズユース―浦和レッズ―ザスパ草津―栃木SC―沖縄SV。J1リーグ通算7試合0得点。J2通算99試合0得点。J3通算43試合1得点。右サイドバックで長年プレー。2006年、浦和ユースから同期の堤俊輔、小池純輝とともにトップ昇格を果たす。草津、栃木を経て、19年から沖縄SVに在籍し、21年シーズンを最後に引退。

(河野 正 / Tadashi Kawano)

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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