元Jリーガーから農家へ転身、次の仕事場は畑と田んぼ 異業種の若手5人で事業立ち上げ「こんなに働いたのは人生で初めて」
【元プロサッカー選手の転身録】西澤代志也(浦和、草津、栃木、沖縄)前編:栃木移籍で出会った生涯の友
世界屈指の人気スポーツであるサッカーでプロまでたどり着く人間はほんのひと握り。その弱肉強食の世界で誰もが羨む成功を手にする者もいれば、早々とスパイクを脱ぐ者もいる。サッカーに人生を懸けて戦い続けた彼らは引退後に何を思うのか。「FOOTBALL ZONE」では元プロサッカー選手たちに焦点を当て、その第2の人生を追った。
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今回の「転身録」は、浦和レッズユースで育ち、浦和、ザスパ草津、(現・ザスパクサツ群馬)、栃木SC、沖縄SVを渡り歩いた西澤代志也だ。2021年シーズン限りで現役を引退し、農家への転身を決断した。父親が経営する郵便局で引継ぎも打診されていたなか、消費者に笑顔を届けるため農産物作りの道をなぜ選んだのか? セカンドキャリアの歩みと近況をお届けする。(取材・文=河野 正)
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農業に従事する元プロサッカー選手というのも珍しい――。浦和レッズと横浜F・マリノスが対戦した今年5月18日、埼玉スタジアムで西澤と久々に再会した折、栃木県宇都宮市で農家に転身したことを聞いた。浦和でプロのキャリアをスタートさせ、ザスパ草津(現・ザスパクサツ群馬)、栃木SC、沖縄SVの4チームで計16年間プレー。昨季限りで現役を引退した35歳は、畑と田んぼを次の仕事場に選んでいた。
1950年頃まで農業、漁業、林業といった第1次産業は日本経済を支えた基幹産業だが、後継者不足が深刻なように今は若者が好んで携わる職業とは言い難い。
しかし西澤ら異業種の若手5人で立ち上げ、今年3月26日から活動を始めた“UTSUNOMIYA BASE”(宇都宮ベース)は、地球と環境と人に優しい野菜や米を作って農業を盛り上げようというプロジェクトだ。消費者に笑顔を届けるため、おいしい農産物作りに余念がない。
昨年5月に引退を決めた西澤だが、次の進路について考えたことは1度もなかった。引退したら祖父が埼玉県飯能市に開局し、現在は父・俊彦さんが経営する郵便局を引き継ぐよう、何度も諭されてきたが、あまり乗り気ではなかったそうだ。
2011年に栃木へ移籍し、8年在籍する間に生涯の友と呼べる2人に出会う。宇都宮市で農家を営む吉澤康晴、バスケットボール男子Bリーグ1部の昨季王者、宇都宮ブレックスの人気選手でもある渡邉裕規で、3人とも同い年だ。
「農業の話を持ち出したのは渡邉で、引退を伝えた時から一緒にやろうと誘ってくれました。吉澤の実家は農家だし、渡邉はもともと農業に興味があったので話がまとまり、僕が引退したらいつでも働ける環境を2人で考えておいてくれたんです」
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。