「直近の代表戦でもう見切りをつけていたのでは」 日本代表OB、FW選考の大迫落選に見解「機動力を選んだ」
【専門家の目|栗原勇蔵】大迫以上に古橋の落選は「意外」
森保一監督率いる日本代表は、カタール・ワールドカップ(W杯)に臨む登録メンバー26人を発表した。FW大迫勇也(ヴィッセル神戸)、FW古橋亨梧(セルティック)、MF原口元気(ウニオン・ベルリン)、MF旗手怜央(セルティック)の落選が目を引いたなかで、元日本代表DF栗原勇蔵氏はFWの選考について、大迫以上に「古橋(の落選)が意外だった」と見解を述べている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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森保監督はW杯大会予備登録55人のリストを提出した際、これまで招集したことがあるメンバーで構成したと明かしていた。それだけに今回の選考でもいわゆるサプライズ選出こそなかったが、森保ジャパン体制でチームトップタイの17得点を挙げている大迫、裏への抜け出しや高い得点力で勝負する古橋、経験豊富なユーティリティーの原口が落選したことは話題を呼んだ。
逆に、左膝内側側副靱帯を部分断裂していたDF板倉滉(ボルシアMG)、右膝内側側副靭帯断裂のFW浅野拓磨(ボーフム)と負傷で出場が危ぶまれていた2人は選出。栗原氏は「浅野、板倉、大迫がどういう風になるかが読みづらかった。結果的に大迫が外れ、板倉と浅野は間に合った」と語った。
現役時代に膝の内側側副靭帯を痛めた経験を持つ栗原氏は、「板倉は部分断裂をしてよく復帰できた」と安堵の表情とともに、不安も口にしている。
「部分断裂は怪我の重症度的にレベル3。痛くてプレーできないし、治っても足を出すのも怖い。直線の走りは大丈夫ですけど、インサイドのキックとか痛くて蹴れません。果たしてしっかり回復はできているのか。カタールに行ったけど使えないのは厳しいので、開幕までの約3週間でどこまで痛みが取れるか。それでも選んだのは板倉への期待と、吉田(麻也)への不安も少なからずあると思います。板倉が万全なら、DF陣はベストな布陣が組めた印象です」
一方で、大迫の落選に関しては9月シリーズの段階ですでにある程度決めていたのではないかと栗原氏は推察する。
「大迫に関しては、全幅の信頼を置いて調整してくれればいいという形か、もう見切りをつけるか、のどちらかかと思っていました。見切りをつけたうえでの、直近の代表戦の選考だったのではないでしょうか。リーグ戦でのプレーに関しては、間違いなく調子は上がっていました。大迫はなんだかんだ入るだろうと、7、8割の人が思っていたはずです。大迫の存在感、これまでの実績は大きかった。そんな選手を外して、どちらかと言えば機動力を選んだ印象です」
FW陣は前田大然(セルティック)、上田綺世(セルクル・ブルージュ)、浅野拓磨(ボーフム)という顔ぶれになったが、栗原氏は「意外だったのは古橋」と語る。
「FWは小粒感が否めない。点を取るためのポジションだけど、逆の発想でチェイシングできる選手から選んでいますね」
森保監督はカウンター主体でゲームを組み立てるのか、選手起用と戦術に注目が集まる。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。