W杯メンバー落選の原口元気が明かしていた強い決意と届かなかった思い 「ブンデス首位チームでもう1回ポジションを奪えば…」
【ドイツ発コラム】ブンデスリーガ首位ウニオン・ベルリンで長所を発揮
11月1日、カタール・ワールドカップ(W杯)に向けた日本代表メンバー26人が発表された。
森保一監督が次々と選手の名前を呼び上げるなか、ブンデスリーガ首位のウニオン・ベルリンで奮闘している原口元気の名前は最後まで口にされることはなかった。
今季、ブンデスリーガ12節終了時で6試合に出場、UEFAヨーロッパリーグ(EL)ではここまでの5試合すべてに出場している。スタメン出場はそれぞれ3試合と2試合。レギュラーポジションを獲得できているわけではないのが実情だが、ウルス・フィッシャー監督から見放されたり、戦力に数えられていないというわけではない。
前線2トップに快足のシェラルド・ベッカーと空中戦に強いジョルダン・シエバチュを擁する今季のウニオンでは、中盤の選手にセカンドボールの回収とそこからの二次攻撃が主な仕事として求められている。
ボール奪取能力が高いラニ・ケディラはアンカーの位置で替えの利かない選手。残る2枚のインサイドハーフのポジションでは元ドイツU-21代表のニク・ハベラーとハンガリー代表アンドラス・シェーファーの2人が前述の役割を上手くこなしており、フィッシャー監督からの信頼も厚い。原口は「ハベラーとシェーファーはすごい上手くやってるなと思う」とライバルの活躍を認めている。
チームとしてそうした戦い方が機能しているのだから、監督として大きく起用法を変えにくい。だが、原口には原口の良さがあり、チームの助けとなるプレーができる。
チャンスが訪れたのは第10節シュツットガルト戦(1-0)。スタメン出場を果たした原口はチームとしての役割を理解したうえで、中盤のスペースでタイミングや試合の状況を見ながらボールを引き出し、攻守をつなぐ存在として見事なパフォーマンスを披露した。チームとして縦に早くボールを当てるのがファーストチョイスなのは共通認識としてあるが、状況的にパスを引き出せるのであれば中盤を一度経由してリズムを作ることができるというのは、原口の持つ長所だろう。
「シュツットガルト戦はいい例で、すごくボールに絡みながらゲームを作るような動きができた。彼ら(ハベラー、シェーファー)にはない特徴だと思うので、ああいう試合展開になったほうが僕の良さは出るかなって。ちょっとボールを持つタイミングがあると良さが出ると思う。そういう時に違いを作る」(原口)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。