賛否のW杯メンバー選考、森保監督は「苦悩だらけだったと思う」 金田喜稔が同情「一番辛い仕事」…指揮官の“図太さ”に期待
【専門家の目|金田喜稔】人生を左右する最終決断…その重圧は本人にしか分からない
森保一監督率いる日本代表が11月1日、同月20日に開幕するカタール・ワールドカップ(W杯)の大会登録メンバー26人を発表した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、「森保監督は苦悩だらけだったと思う」とメンバー選考の苦しみを気遣った一方、「彼の一種の図太さは、ここからW杯に向けてさらに発揮される」と期待を寄せた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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今回のカタールW杯メンバー発表までに、森保監督は苦悩だらけだったと思う。最終的に監督がメンバー選考の責任をすべて背負う。選手の人生やキャリアを左右する大きな最終決断をしなくてはならないのだから、その重圧は本人にしか分からないものがある。
チーム作りの方針や戦術などを決めるのも監督の職務だが、一番辛い仕事はこのW杯メンバー発表ではないかと思う。W杯メンバーに入るか否か。その後の選手キャリアを大きく左右するわけで、親善試合に招集するか否かとは話の次元が全く違う。
誰を選んでも、誰を外しても、それが本当に最善かどうかなど誰にも分からない。選考に賛否は付きまとうもので、切っても切り離せないものだ。選ばれた選手への期待感は高まる一方、落選した選手やその関係者からすれば不平不満があるかもしれない。ファンやサポーターからすれば、応援する選手や好きな選手が落選すればガッカリするし、何か言いたくなるのも不思議ではない。そうした賛否の矢面に立つのが指揮官の定めであり、森保監督の職責でもある。
今回のカタールW杯で、日本はドイツ、コスタリカ、スペインと同居した。同じグループにW杯優勝経験国のドイツとスペインが入り、さらにコスタリカも2014年ブラジル大会で日本を上回るベスト8に進出した経験を持っている。端的に言えば、W杯ベスト16止まりの日本より、どの国も経験値は上なわけだ。そのなかで「自分たちのサッカー」というロマンや理想論ではなく、現実的にどう戦って勝ち点を得るか。その点に森保監督も頭を悩ませたはずで、メンバー選考の裏側で見えない苦悩があったことは想像に難くない。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。