本大会での戦い方をイメージ? 元日本代表GK楢﨑正剛、W杯メンバー26人に見解「守備の安定をもたらしたい意図は見える」
【専門家の目|楢﨑正剛】カタールW杯に出場する日本代表メンバーが確定
カタール・ワールドカップに臨む日本代表26人のメンバーリストを眺めた元日本代表GK楢﨑正剛氏は、静かに頷いた。
「驚くような人選はありません。納得を得やすい人選ですね」
いわゆるサプライズなきメンバー選考は、手堅い印象の強い森保一監督のこれまでの立ち回りから、ある程度想定できたこと。選出が有力視されていた大迫勇也(ヴィッセル神戸)や原口元気(ウニオン・ベルリン)が選考からは漏れたが、負傷離脱している選手の回復状況や実際の試合をイメージしたプランニングがしっかりできている裏返しでもある。
「誰もが納得するメンバー選考はありません。どの監督にも好みの選手はいますし、ファンには贔屓にしている選手がいるでしょう。堅実なタイプの森保監督がこのタイミングで冒険するとは考えにくかったですし、怪我をしている選手は回復のプロセスが見えていて、本大会までには準備が完了すると確信しているからこその選出だろうと思います」
今大会はこれまでの23人から26人に登録メンバーが増え、指揮官には新たに選択の余地が生まれた。23人なら選ばれていたであろうユーティリティープレーヤーが、『+3』のスペシャリストに弾き出されている可能性も否定できない。
その一方で、『+3』にユーティリティープレーヤーを選ぶことで戦い方のバリエーションは格段に増える。
楢﨑氏は全体的な印象をこう語る。
「まずはバランスを重視した印象があります。どこかのポジションに偏ることなく、すべてのポジションに複数の候補選手がいる。フィールドプレーヤーが23人になったことと複数のポジションをこなせる選手もいて、1ポジションに2~3人ずつ配置することが可能になりました」
大きな偏りはない。そんな中で楢﨑氏が注目したのはDFを担うであろう選手たちの顔ぶれだ。
「あくまでもバランスを考えた中での話ですが、守備的な選手がやや多めに選ばれているかもしれません。それは本大会での戦い方を明確にイメージしているからこその選出でしょう。守備の安定をもたらしたい意図が見えます。センターバックとそれ以外のポジションでも起用できる板倉滉選手(ボルシアMG)や伊藤洋輝選手(シュツットガルト)を同時に選んでいるところを見ると、オプションとして親善試合でテストした3バックなど違う配置にする可能性もあると思います」
22日後に迫った初戦のドイツ戦に向け、戦いはすでに始まっている。順当な26人の森保ジャパンが、カタールの地でサプライズを巻き起こす。
[プロフィール]
楢﨑正剛/1976年4月15日生まれ、奈良県出身。1995年に奈良育英高校から横浜フリューゲルスに加入。ルーキーながら正GKの座を射止めると、翌年にJリーグベストイレブンに初選出された。98年シーズン限りでの横浜フリューゲルス消滅が決まった後、99年に名古屋グランパスエイトへ移籍。10年には、初のJ1リーグ優勝を経験し、GK初のMVPに輝いた。日本代表としても活躍し、国際大会では2000年のシドニー五輪(OA枠)、02年日韓W杯などに出場。19年1月に現役引退を発表し、現在は名古屋の「クラブスペシャルフェロー」に加え、「アカデミーダイレクター補佐」および「アカデミーGKコーチ」を兼任する。
藤井雅彦
ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。