カタールW杯行きの日本代表DF「序列検証」 “サプライズシステム”を想定した選出も?

怪我から復帰を目指す板倉の状態やいかに

 その一方でスペインもドイツも”センターフォワード問題”を抱えており、スペインの主録であるアルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリード)もティモ・ヴェルナー(RBライプツィヒ)も強力なアタッカーではあるが、列強国の主力FWやポーランドのロベルト・レバンドフスキ(FCバルセロナ)のようなスーパーエースを抱える国ほど、前線中央の圧はない。

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 そうなってくると、日本でもナンバーワンの対人能力を備える冨安を右で起用するのは戦略としてもおかしくはない。もう1つがCBの充実だ。6月シリーズでは致命的なミスを連発して批判を浴びたキャプテンの吉田麻也も、ドイツ1部のシャルケで開幕から連続出場を続けており、ディフェンスリーダー的な存在となっている。“昇格組”であるシャルケは厳しい序盤戦となっているが、このまま吉田がいい状態で行けば森保監督の信頼もあり、主力として3度目のW杯を迎える可能性は高い。

 そして、そのシャルケの1部昇格を支えた板倉滉(ボルシアMG)の成長が目を引く。もともと板倉は中盤もこなせるマルチであり、ダニエル・ファルケ監督はボランチとの併用も示唆していたが、CBの主力として欠かせない存在になってきている。ただし、9月シリーズの招集前に左膝の内側側副靱帯を部分断裂、同箇所を負傷したFW浅野拓磨(ボーフム)とともに合宿メンバーから外れた。

 保存治療を選択した板倉は順調な回復が伝えられているが、ボルシアMGのファルケ監督は中断期間まで板倉を起用しないことを示唆している。状態は戻っても、11月17日のカナダ戦が復帰後は唯一の実戦テストとなる可能性が高く、グループリーグ初戦のドイツ戦でどこまで起用の目処が立つかは不明だ。それでもCBとボランチの両ポジションで強度の高いプレーができる板倉は貴重な戦力で、よほどのことがない限りメンバー入りすると見る。

 吉田と板倉に加えて、国内組の谷口彰悟(川崎フロンターレ)も引き続き存在感のあるパフォーマンスを見せており、冨安も含めた4人まではアクシデントがない限り、かなり濃厚とも見られる。そこに右サイドでの酒井の状態や、左サイドバックを兼ねる中山雄太(ハダースフィールド・タウン)や伊藤洋輝(シュツットガルト)の起用法をどう考えるかで、26人枠のもう1枚にCBを加えるのか。国内組ではE-1選手権で存在感が目立った中谷進之介(名古屋グランパス)、スイスの瀬古歩夢(グラスホッパー)など候補に挙がる。

 左SBは長友、中山、伊藤の3人が争う形で、そこに韓国戦で得点を挙げるなど、E-1選手権で日本の大会優勝に貢献した佐々木翔(サンフレッチェ広島)やFC東京からポルトガルへ渡った小川諒也(ヴィトーリア)が食い込めるかどうか。ここも基本は2枚だが、長友が右サイドを兼ねることや中山がボランチ、伊藤がCBのオプションとして考えられるので3枚となるかもしれない。

 先日コスタリカで行われたU-20女子W杯では日本が本番直前に5バック気味の3バックにシステムチェンジして、相手にあまり情報がないこともうまく生かして準優勝に躍進した。守備で5バック気味になる3バックは、森保監督がもともと持っている引き出しなので、男子のA代表で同じように行くかは分からないが、そうしたサプライズも想定したメンバー選考になる可能性も捨てきれない。

■DFのカタールW杯有力候補(9人想定)
◎冨安健洋(アーセナル/23歳)
◎吉田麻也(シャルケ/34歳)
◎長友佑都(FC東京/36歳)
〇板倉 滉(ボルシアMG/25歳)
○谷口彰悟(川崎/31歳)
○酒井宏樹(浦和/32歳)
〇山根視来(川崎/28歳)
○中山雄太(ハダースフィールド・タウン/25歳)
○伊藤洋輝(シュツットガルト/23歳)
△瀬古歩夢(グラスホッパー/22歳)
△佐々木翔(広島/33歳)
△菅原由勢(AZ/22歳)
△中谷進之介(名古屋/26歳)
△橋岡大樹(シント=トロイデン/23歳)
△室屋 成(ハノーファー/28歳)
△小川諒也(ヴィトーリア/25歳)
◎=濃厚、◎=有力、△=当落線上

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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