堂安律所属のフライブルク、「育成クラブ」として高い評価を受ける理由 選手が“正しい成長”を実感できる環境とは?

新加入選手すべてをすぐにトップチームで起用せず セカンドチームでじっくり調整

 新加入選手すべてをすぐにトップチームで起用しないところもフライブルクの特徴だ。どの選手に、どんな経験とどんな取り組みが必要かを明確に提示するから、選手も集中してプレーができる。

 堂安律やミヒャエル・グレゴリッチが加入直後から即戦力として起用される一方で、ザンクトパウリから加入したFWダニエル・コフィ・キレイは序盤ほとんど出場機会がなかった。資質に対する信頼はあるものの、コンディション、またチームコンセプトへの理解が十分ではなかったことが要因だ。

 そうした時にどんな取り組みと対応をするかがとても丁寧なのがいい。現状を説明し、期待していることを伝え、不足点を分析し、お互いに納得したうえで、今取り組むべきことを明確にする。キレイはセカンドチームで出場し、じっくり調整したことで、今ではトップチームに欠かせない戦力となっている。

 シュトライヒは「セカンドチームの監督トーマス・シュタムと私は頻繁に情報交換をしている。出場機会に応じてセカンドチームでプレーするアイデアを提供する」とよく口にしている。

 選手がコンディションを上げ、課題と向き合い、成長するために何が必要で、大切かを分かっている。要求は非常に細かく、多い。だがそれをやり切れば正しく成長できると選手自身が実感できる環境がここにはある。

 フライブルクがドイツにおける育成クラブとして高い評価を受けているのには確かな理由があるのだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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