堂安律所属のフライブルク、「育成クラブ」として高い評価を受ける理由 選手が“正しい成長”を実感できる環境とは?
トップチームとセカンドチーム、世代別育成チームが互いに補完し合う関係
フライブルクはそれこそフォルカー・フィンケが監督を務めていた30年前から、セカンドチームの存在をずっと大事にしていた。どれだけU-19まで活躍をしていても、育成年代でのサッカーと大人のサッカーには大きな違いがある。フィジカルコンタクトもそうだし、メンタルコントロールもそうだし、インテンシティーが高い試合の状況を素早く正しく認知してプレーに反映させるのは簡単なことではない。
一握りの選手はU-19から一気にトップチームでデビューを飾ることもできるが、なかなか順応できずに苦労する選手のほうが間違いなく多い。フライブルクではトップチームとセカンドチーム、そして世代別育成チームが互いに補完し合う関係ができている。
昨シーズン、主軸選手の何人かが負傷で離脱している時期があったが、シュトライヒ監督はまるで慌てることなく、記者の質問に答えていたのが印象的だった。
「心配はない。数人怪我で離脱しているが、我々は選手を交代できる。これまで出場機会が少ない選手も含めて、いい選手がいる。そして我々には非常にいい育成アカデミーがあるんだ。下からどんどん上がってくる。だから心配は全くない。もし誰かが出れなくても、ほかの誰かが我々にはいる」
昨シーズンのレギュラー右サイドバック(SB)ルーカス・キューブラーが怪我で出遅れたが、セカンドチームで経験を積んでいた20歳のキリアン・シルディッラがその穴をすぐに埋めた。本職センターバックだが、吸収力が凄い。試合を重ねるごとにSBとして必要なプレーをどんどん身に付けている。U-21ドイツ代表ヤニック・カイテル、ケビン・シャーデという逸材もセカンドチームで自身の成長に必要な課題と向き合い続ける時間を十分に持ったからこそ今、飛躍の時を迎えている。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。