堂安律所属のフライブルク、「育成クラブ」として高い評価を受ける理由 選手が“正しい成長”を実感できる環境とは?
【ドイツ発コラム】第13節終了時でリーグ2位、ELもグループステージ突破と好調
昨季、ドイツ最優秀監督に選出されたクリスティアン・シュトライヒが率いるフライブルクが今季も好調だ。一時はブンデスリーガで22年ぶりとなる首位の座に立つなど第13節終了時で首位バイエルン・ミュンヘンと勝ち点1差の2位。UEFAヨーロッパリーグ(EL)ではグループステージ6試合4勝2分で決勝トーナメント進出を決めている。DFBポカールでも2回戦で2部ザンクトパウリに苦戦しながら、後半アディショナルタイムで同点に追い付き、延長終了直前で決勝点を奪い、次ラウンド進出を果たした。
近年コンスタントにチームとして結果を残している背景として、シュトライヒ監督はセカンドチームの存在を挙げていたことがある。現在フライブルクのセカンドチームはブンデスリーガ3部に所属。ブンデスリーガのクラブで3部にセカンドチームを抱えるのは、フライブルクとボルシア・ドルトムントの2つのみ。ドイツではセカンドチームが2部へ昇格することはルール上できないので、最上位のリーグにいることを意味する。
ちなみにフライブルクは女子トップチームが1部で、女子セカンドチームも2部所属(女子では2部所属も可能)という、男女4チームがそれぞれ最上位のリーグに所属しており、これはドイツで唯一無二。ほかのどのクラブもなし得ていない。
U-23チームが3部でプレーするのは簡単なことではない。4部に所属するマインツセカンドチームでコーチを務めるシモン・ペッシュは「U-19ブンデスリーガでプレーしているだけで、自分があたかもトップレベルだと勘違いをする選手が出てきてしまうが、実際のリーグのレベルで考えるなら、U-19ブンデスリーガよりも大人の4部リーグのほうが間違いなく上だ」と話してくれたことがある。
育成年代というのは同年代の選手とプレーをするが、U-19以降はそうした年代のくくりがない。いわば各年代のトップレベルの選手が残り、しのぎを削っている。試合の流れ、ボールを巡る駆け引きなど経験で大きな差があるなか、U-19から上がってきた選手は順応し、そこで対応するだけではなく、そのなかで違いを生み出せるようになれなければ、トップチームへの扉は開かれない。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。