「J1参入プレーオフ出場」4チームの見逃せないキーマン厳選 岡山、熊本、大分、山形…J2クラブ“推し”の主役候補は?
“武者修行”を経て熊本で飛躍、平川の躍動に期待
■ロアッソ熊本のキーマン:平川 怜(MF)
今季J2リーグ成績:11試合2得点
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かつてMF久保建英(レアル・ソシエダ)とFC東京U-18やU-17日本代表で名コンビを組んだタレントであり、筆者も明るい将来を信じて疑わなかった。しかし、プロの壁に当たり、FC東京でなかなか出番がなく、チャンスをもらってもモノにできない時期が続くなかで、鹿児島ユナイテッド、松本山雅FCでの“武者修行”を経て、22歳となった夏の移籍で熊本にやってきた。
チームを率いるのは“鬼才“大木武監督。パス&ムーブを駆使する攻撃的なスタイルで、前半戦から注目を集めていた熊本だが、大木監督が2列目の中央をこのテクニシャンに託したことで、リズムとアクセントがさらに引き上げられた。平川もディフェンスを剥がせるセンスと視野の広さをより前のポジションで生かすことで、14得点のFW髙橋利樹など3トップに好パスを送ることはもちろん、MF河原創の効果的な攻め上がりを引き出すなど、新境地を見出している。
本職のボランチだと展開力は生かせるが、守備面でどうしてもデュエルの問題が出てしまう。しかし、前目のポジションでは個人でディフェンスを切り裂くほどのスピードやパワーはない。そんな平川にとって、コンビネーションで相手を崩し切るスタイルで、水を得た魚のように躍動している。熊本でかつてない輝きを放っている平川だが、チームをJ1の舞台に導くことができるか。
■大分トリニータのキーマン:下田北斗(MF)
今季J2リーグ成績:35試合3得点
古巣の川崎フロンターレが、J1で逆転優勝に向けて戦っている。筆者の中で、その川崎でも十分に戦力になるという評価は変わっていない。しかし、大分における下田の存在感を見れば、また違った充実感を得ているようだ。それは右上腕に巻かれたキャプテンマークが証明している。
中盤から攻守を動かす中央軸のように振る舞い、方向性を与えていく。主にボランチのコンビを組む20歳MF弓場将輝は機動力を活かして幅広く前線へ関わっていくなかで、下田は冷静にバランスを取りながら、常に味方のためのパスコースを用意する。それでいて、多くのチャンスは下田を起点にもたらされるのだ。
ここまでの3得点5アシストという数字も、そうした役割をすべてこなしながら達成したものだ。もともと「もっとうまくなりたい」が口癖で、良い意味で“我欲”の強い選手だった。しかし、川崎とは異なる環境の中で、自分が引っ張る側にならなければいけないという変化が見られる。今の下田を観ると、川崎がタイトルと無縁だった頃の中村憲剛氏を思い出す。この昇格をかけたプレーオフでも心身で重要な存在であることは間違いない。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。