カタールW杯行きの日本代表MF「序列検証」 最後の“滑り込み”の可能性を秘めるのは?

2列目とサイドの大枠は確定

 そして、周りを生かす術を知っている選手で、90分のゲームコントロールに長けている点を考えれば、世間の声はさておき、現場レベルでそう簡単には外しにくい。ただし、2列目やサイドのオプションも含めて考えた時に、スペシャリティーという部分では少し弱い部分もある。レガネスでさらに、目に見える結果に導く活躍を見せてもらいたいが、現時点で△(当落線上)の一番手という位置付けにした。

 ヴィッセル神戸からスペイン2部ウエスカに移籍した橋本拳人は、W杯アジア2次予選では一時スタメンを奪ったこともあるが、怪我やロシアの情勢により難しい時期を過ごして神戸に加入。そこで短い時間ながら、公式戦4連勝の立役者になり、E-1選手権のメンバー入りも果たした。新天地での開幕時は途中出場だったが、直近2試合はスタメン起用されている。

 ただ、オプションとして2列目が本職である久保建英(レアル・ソシエダ)のインサイドハーフやセンターバックの板倉滉(ボルシアMG)、左サイドバックの中山雄太(ハダースフィールド・タウン)、伊藤洋輝(シュツットガルト)もボランチをこなせると考えると、なかなか入ってきにくい。橋本は9月のメンバーに入らなかったため、E-1選手権組の藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)、岩田智輝(横浜F・マリノス)、脇坂泰斗(川崎フロンターレ)、同じく未選出の川辺駿(グラスホッパー)とともに厳しくなった。

 2列目&サイドも大枠はだいたい固まってきているように思う。攻撃の大黒柱である伊東純也(スタッド・ランス)に加えて、挑戦の場をベルギーからイングランドに移した三笘薫(ブライトン)、リバプールからリーグ・アンの名門ASモナコに移籍した南野拓実も26人枠は当確だろう。ただ、2人とも所属クラブでポジションを確保できておらず、カップ戦も含めてここからどのように立ち位置を固めていけるか、日本代表の常連メンバー内での序列にも影響するかもしれない。一方で、久保建英(レアル・ソシエダ)と堂安律(フライブルク)はポジティブな状況にある。

 そのなかで久保は2トップの”9.5番”的な位置付けで、元スペイン代表MFダビド・シルバを休ませる場合のトップ下も有効なオプションになっている。9月のアメリカ戦では左サイドハーフとして起用されて一定のパフォーマンスを見せ、ドイツ戦でスタメン起用の可能性も高まった。

 堂安は右サイドからカットインする形がフライブルクでもハマり、インサイドとアウトサイドを柔軟に使い分けたプレーで、フライブルクでの攻撃のキーマンになっている。成長著しい堂安の起用法は1つ鍵になる。だが日本代表の右サイドは伊東が絶対的な存在になっており、それほど早い時間帯の交代は考えにくい。4-3-3の右インサイドハーフも可能だが、どうしてもオプションになってしまう。それこそスペインやドイツとの対戦ではそれほど主導権を握れない前提で、4-4-2で2トップに古橋と伊東を並べるような形も面白いが、実際どうなるか。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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