【検証】森保ジャパンの「4年間」(2)・世代交代 “1チーム2カテゴリー”成果は「80点」、若手の台頭は「まだ物足りない」
東京五輪ではメダル逃すも、その経験が大きな効果を生む
結局、欧州組を除くフルメンバーだった韓国に完敗して優勝を逃し、さらに厳しい声に晒されることとなった。森保監督に対するネガティブな評価が一気に増大したのが、東京五輪の予選を兼ねたU-23アジアカップだった。サウジアラビア、シリアに連敗し、3試合目のカタールにも引き分けて、未勝利で大会から去ることとなったのだ。
日本は五輪の予選を免除された状況で参加しており、他国とはモチベーションに差があったのは確かだ。それでも1つでも多く国際経験を積むことが求められたなかで、グループリーグでの敗退は大失態だった。その大会で悔しい思いをしたメンバーから上田やMF田中碧、MF旗手怜央、MF相馬勇紀が大きく成長して行くのだが、仮にこの半年後、予定どおりに東京五輪があったら、惨敗に終わった可能性がかなり高い。そうなれば最終予選を待たずして、森保監督の進退問題も浮上していたかもしれない。
奇しくも、新型コロナウイルスの世界的な拡大により、日本でも緊急事態宣言となり、世界でも軒並みロックダウンが行われる状況で、東京五輪は翌年に延期された。そして特別措置により、男子サッカーはU-24で行われることとなった。これに伴い、森保監督は五輪前でも、A代表の基準を満たす選手であれば組み込んでいくことを改めて示す。2020年秋の欧州遠征では堂安や冨安のほかにも、板倉やDF中山雄太、DF菅原由勢、MF三好康児、MF久保建英が五輪を待たずに、フルメンバーのA代表に名を連ねた。
2021年夏に延期となった東京五輪はオーバーエイジにDF吉田麻也、MF遠藤航、DF酒井宏樹というA代表の主力中の主力3人が加わる形となった。結局、準決勝でスペイン、3位決定戦でメキシコに敗れて目標のメダルを逃したが、ここでの経験がアジア最終予選の後半戦から現在にかけて、大きな効果を生むこととなった。
W杯メンバー発表前の最後の活動となった9月のドイツ遠征は30人の大所帯となったが、オーバーエイジ以外の東京五輪組からGK谷晃生、冨安、DF瀬古歩夢、中山、田中、旗手、堂安、久保、MF三笘薫、相馬、前田の11人が招集された。さらに東京五輪には縁のなかった99年生まれのDF伊藤洋輝とFW町野修斗を加えると、半分近くが東京五輪世代となる。また怪我で招集外だった板倉も順調に回復すれば、W杯のメンバー入りはほぼ間違いない。
その中で2001年生まれの久保は本来、パリ五輪世代だが、多くのW杯参加国ではパリ五輪世代はもちろん、10代の選手も複数いるのが当たり前となっている。サッカーは年齢だけでやるものではなく、ピッチに立ったら18歳も40歳も関係ない。そうは言っても日本は決して若手が多いほうではなく、主力となればなおさらだ。そうしたことから目標だった“1チーム2カテゴリー”はまずまずうまく行ったが、若手の台頭としては物足りない部分もあるので、ここは80点としたい。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。