41歳MF山瀬功治を支えた妻の“料理”と“化学” 大怪我で“引退危機”から復活に導いた普通と違う食の視点「受け入れてもらえなかった」

レノファ山口に所属するMF山瀬の妻・理恵子さんは食事から徹底的にサポートする【写真:本人提供】
レノファ山口に所属するMF山瀬の妻・理恵子さんは食事から徹底的にサポートする【写真:本人提供】

【アスリートを支える妻たち|山瀬理恵子】大怪我に苦しむ夫・功治を助けるために――

 世界中を熱狂の渦に巻き込むアスリートたち。彼らは多くの支え、協力があってトップパフォーマンスを続けている。そんな“裏方”に徹する妻にスポットライトを当て、どのようにサポートをしているのかに迫る不定期企画「アスリートを支える妻たち」。第1回はJ2リーグのレノファ山口に所属する元日本代表MF山瀬功治の妻で料理研究家の理恵子さん。Jリーグ23年連続ゴールを記録中の41歳MFの健康面を日常の食事から徹底的にサポートする姿に注目した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞)

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 今から20年前、理恵子さんの人生は大きく変わることとなった。山瀬との結婚を控えていた2002年、コンサドーレ札幌(当時)に在籍していた山瀬はシーズン中に右膝前十字靭帯断裂の重傷を負った。翌03年には浦和レッズへ移籍し、結婚。だが、04年に悲劇が待っていた。今度は左膝前十字靭帯断裂で、再び長期離脱を強いられた。理恵子さんは「もう復帰できないかも。パフォーマンスは戻らないかも」と聞かされた。

「右も左も切ると、当時は前十字靭帯断裂ならまだ『復帰できないかも』と言われていた時代。なので、あとがないなと思った」

 居ても立っても居られず、“引退危機”に陥った夫への思いが理恵子さんを突き動かした。当時、浦和の管理栄養士でアテネ五輪では日本代表のサポートもした川端理香さんとFAXで毎日連絡を取り、食事のアドバイスを受けた。05年に横浜F・マリノスへ移籍すると、川端さんと個人契約を結んでストイックにリハビリ食について勉強した。

「川端先生からは『こういう食事を目標にしてください』とかをベースに、怪我のタイミングのリハビリ食から学んだ。当時は個人契約は高価なものでしたけどね(笑)。だけど、私自身、リハビリ食、怪我をしていて何を食べたら治るかという知識が全然ない。現代はすでに九大栄養素が重要と言われている時代で、当時は五大栄養素が主流。まだまだ意識する栄養素は少なかったけれど、怪我をした時にその(治す)栄養素だけを摂っていても治らない。前十字靭帯なら靭帯を治すためのコラーゲン、(コラーゲンの合成を促す)“つなぎ”のビタミンCなど、なかなか学べないところがあったので、個人契約したのはとてつもなく大きかった」

 日々のやり取りでは1か月に1回、テーマに沿った食材やレシピがまとめられたプリントがFAXで送られてくる。この情報をベースに日常の食事を組み立てていった。1年間、川端さんからみっちり叩き込まれ、山瀬が日本代表入りしたタイミングで独学に切り替えた。

「今度は独学でパフォーマンスアップのための栄養学を学び始めた。今の料理研究家としてのベースは、従来は、ニュアンスでとらえるはずの五感の一部である『香り』を有機化学で表現する学問。なぜかというと、(山瀬は)怪我が多かったから。当時はまだまだ先駆けだったアロマテラピーマッサージとか、植物化学成分を使った栄養学、『メディカルハーブ』という分野。周りからしたら『何やってんだ』と(笑)。まだ当時は、日本のアロマテラピーはイギリスからやってきたリラクゼーションを主な目的としたマッサージ法が主流で、香り化学というとまだまだエステティック的なイメージが専攻していると思うけど、私の中のイメージでは100%、怪我や痛みの治癒だったり、細胞を賦活、活性化させる目的として、補完医療の一環として、やっていた。でも、なかなか当時は受け入れてもらえなかった」

 スポーツアロマトレーナー協会によるスポーツに特化したセラピストの資格を取り、食に生かすことにした。アロマテラピーマッサージは精油(香り成分)が鼻腔から自律神経系、免疫系、内分泌系を司る大脳辺縁系に直接届き、また体に塗布することによって、さまざまな機能性を持つ植物化学成分が経皮吸収され、全身循環にのって生理、心理作用をもたらす。香りは化学成分だが、実は料理の色素も化学成分。この共通項に目を付けた。

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