久保建英の秘めた可能性をFC東京の関係者5人が証言 「自分の存在を言葉でもプレーでも表現できる」
FC東京U-18佐藤一樹監督の証言
第一印象は「率直に面白いな、楽しそうにボールを蹴る選手」だったという。一方で、身に付けなければいけないことも存在する。だが、佐藤監督は無理やり教えるつもりはない。
「まずは寄り添い、彼の成長をつぶさに見つめていきたい。できないからといって詰め込んだら、良さがなくなる。経験や体験が選手を育てると思っているので、『もっとハードワークしろ、もっと球際厳しく行け』と何万回も言うより、自ら『これが足りない』と感じる体験をしてほしい。体格の違う上級生と当たったら、もっとこうしないといけないって思うんですよね。それが成長するための一番のヒントになる。そうしたシチュエーションをどれだけ提供できるかが僕らの使命だと思っています」
久保には、そうしたことに気づける頭の回転の速さと、プレー同様の表現力がある。今年のチームが始動して間もないミーティングでのことだ。選手たちを集めて佐藤監督が「ドンドン自己主張していこう」と言い、さらにこう語り掛けた。
「自分がこうしたいから、こうしてほしいと言えるようになろう。それを受け入れる耳を持ち、お互いの良さを出し合うことがチームにとって大きな足し算になっていくから」
そして、久保が目に入ると「建英もスペインでやっていたから分かるよな、向こうは自己主張がすごかっただろ」と問いかけた。すると、久保が「はい!」という快活な返事をしたかと思えば、続けて「時と場合によります!」と返してきた。一瞬の間を空けて、部屋は笑い声に包まれた。
思わず「ぷっ」と吹き出してしまうような、ほっこりさせるエピソードだが、15歳にも満たない久保は、自らの言葉で表現(=主張)したのだ。佐藤監督も笑いながら、そうした姿に感心したという。