「若い選手たちも主役になりつつある」 FC東京、アルベル監督がC大阪戦で上機嫌だった訳

劇的にスタイルを変えた今年の出来に徐々に手応え

 ただし、それらを差し引いてもFC東京のパフォーマンスは効率的に機能した。最前線では1トップのディエゴ・オリヴェイラが警戒され、一方で中盤に降りてのポストワークも託されていた。

 そこで状況を見てインサイドハーフの塚川孝輝が最前線に飛び出し、一層中央への意識を引き付けた。先制ゴールは左からバングーナガンテ佳史扶が、2点目も右から中村帆高が、いずれもC大阪4人のDFの頭を越えてファーサイドまで振ったボールを渡邊凌磨(この日ハットトリック)が決めている。ビルドアップのバリュエーションが増え、サイドでの連携からの崩しも円滑になり、それは追いかけるC大阪が前がかりになるほど威力を発揮した。

 就任以来最大の4点差で快勝したアルベル監督は当然上機嫌だった。

「開始1分から高いインテンシティーとテンポを維持できた。この成長は予想通りだ。もちろん降格もないし、昨年の平均勝ち点を上回った」

 これで2試合を残して5位に浮上したFC東京は、1つ上位のC大阪との勝ち点差を「1」に詰めた。

「我々は今年劇的にスタイルを変え、まだ波はあるが、若い選手たちも主役になりつつある。この挑戦が始まって7~8か月。横浜(FM)は4年間、川崎は5年間続けているんだ」

 アルベル監督が語るように、FC東京にとっては我慢の年だった。劇変で序盤から出遅れ中間順位を彷徨ったため、どうしてもメディアへの露出は減った。だが適材適所を見極めながら着々と整備は進んでおり、指揮官が自負するように改革元年の成果としては悪くない。

 残り2戦も厳しい相手ではあるが、もしアジアの舞台で戦う切符でも手にするようなら、開花の兆しとなるのかもしれない。

【動画】「DAZN」公式ツイッターが公開、MF渡邊凌磨、C大阪戦で決めた左足コントロールショット

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※「DAZN」の許可を得て掲載しています。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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