9月シリーズで進展、カタールW杯行きの日本代表GK「序列検証」 緊急事態に備えた“サプライズ選出”も?

ラスト1枠でベテランの経験値を取るか、若手育成を取るか

 伸びしろという意味では谷晃生(湘南ベルマーレ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、鈴木彩艶(浦和レッズ)の”東京五輪トリオ”が、3枠目を狙う候補としてしのぎを削っている。

 谷と大迫はアンダー世代からずっと競争を続けてきた関係でありながら、谷自身も「みなさんが想像するような殺伐としたものはないです」と笑いながら答えるように、互いに高め合う健全なライバルであるようだ。彼らにJリーグでの実績や経験では劣る鈴木も、浦和では西川周作という代表クラスのチームリーダーを相手に競争を挑み、J1リーグ第29節柏レイソル戦では同じパリ五輪世代のGK佐々木雅士を向こうに回して、立て続けのビッグセーブで4-1の勝利につなげた。

 正直、細かいところを気にして見ると、記者目線ながらキャッチングや処理の安定性に関しては、上記の3人はもちろん谷や大迫よりも一段落ちる評価にならざるを得ない。しかし、なかなか試合に出る機会が無い”第3GK”という立場であれば、成長著しい鈴木が本大会に臨む代表チームの雰囲気を感じ取ったり、ドイツのマヌエル・ノイアー(バイエルン・ミュンヘン)やコスタリカのケイラー・ナバス(パリ・サンジェルマン)など、世界を代表する相手GKの振る舞いを間近に観るというのはこの上ない機会になる。

 カタールW杯で厳しいグループを突破し、さらにベスト8を目指すことは大きなミッションになるが、川島のように40歳前後までトップレベルで活躍できるGKというポジションで、若い才能に道を開いていくことも意味がある。

 26人枠と言っても、基本GKは3人構成になる中で権田、シュミット、川島の3人がそのまま本大会に行くのは既定路線だが、ここまで森保監督が谷や大迫、E-1選手権では浦和の控えだった鈴木を招集したことを考えると、コンディションや自チームでの出場状況を加味しながら、ラスト1枠は3人の中からエントリーする可能性も残されている。

 ただ、やはり権田やシュミット、川島の誰かに怪我やアクシデントが出た場合に”電話一本”ではないが、浦和をAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ファイナルに導く働きを見せた西川にも若干ながら可能性が残されているのではないか。その意味でも鈴木と西川、浦和でのハイレベルな競争は代表目線でも興味深い見どころになる。

■GKのカタールW杯有力候補(3人想定)
◎シュミット・ダニエル(シント=トロイデン/30歳)
〇権田修一(清水/33歳)
〇川島永嗣(ストラスブール/39歳)
△谷 晃生(湘南/21歳)
△大迫敬介(広島/23歳)
△鈴木彩艶(浦和/20歳)
△西川周作(浦和/36歳)
◎=濃厚、◎=有力、△=当落線上

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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