3バック&4バック、大幅ターンオーバーの可能性も? 森保ジャパンのカタールW杯戦術をデータから考察
4-2-3-1の成熟路線が有力
【2:4-2-3-1と4-3-3(4-1-4-1)はどちらをメインで使うのか】
就任当初から、森保監督は4-2-3-1をメインで使ってきた。2019年アジアカップの時の基本となったフォーメーションも4-2-3-1で、選手の配置はこうなっていた。
大迫勇也
原口元気 南野拓実 堂安律
遠藤航 柴崎岳
長友佑都 冨安健洋 吉田麻也 酒井宏樹
権田修一
森保監督は就任直後、中島翔哉を左ウイングとして起用していたが怪我や次第に調子を落とすなどして、この大会では原口が使われることとなった。
この大会後には伊東純也の成長が著しく、鎌田大地の台頭などもあったため南野を左に回し、トップ下には鎌田を起用するようになる。
そして、W杯最終予選の初戦、オマーン戦では次のような先発となった。
大迫勇也
原口元気 鎌田大地 伊東純也
遠藤航 柴崎岳
長友佑都 植田直通 吉田麻也 酒井宏樹
権田修一
そして2敗してあとがなくなったあと、4-3-3を使い始める。運命の分かれ道だったとも言えるホームのオーストラリア戦ではこのような布陣でスタートした。
大迫勇也
南野拓実 守田英正 田中碧 伊東純也
遠藤航
長友佑都 冨安健洋 吉田麻也 酒井宏樹
権田修一
そして、その後はこの4-3-3(4-1-4-1)を最初のフォーメーションとして使うことで本大会出場まで乗り切っている。
チームをどん底から救った4-3-3のほうが、いい印象に映るかもしれない。だが、4-2-3-1から変わらざるを得なかったのには理由があった。
1つは最終予選がスタートした時にトップ下として使った鎌田大地の調子が悪かったこと。また柴崎岳のコンディションも悪く、アウェーのサウジアラビア戦では失点のきっかけを作ってしまったこと。そのため、遠藤航、守田英正、田中碧と、プレーヤーの特性的には3ボランチとも言えるような組み合わせを使って中盤のミスを減らし、伊東の突破からゴールを奪おうと路線変更した。
ヨーロッパに出発する前の取材で、森保監督は「カタールW杯に向けての準備になるように活動したい」と、これまでより本大会に向けた戦いを試行するとしていた。となると、鎌田が復調した現在、4-2-3-1をメインに据えたと考えたほうがいいだろう。4-3-3をメインに戦っていた時期でも、たびたび4-2-3-1にシステム変更していたのも、本大会では4-2-3-1で戦おうという構想の下、熟成させていたと思える。
もっとも鎌田の代役として起用できそうな選手はいないため、今後の鎌田のコンディションによっては4-2-3-1を断念せざるを得ない可能性も残っている。
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。