鎌田大地は順風満帆? ベテラン長谷部誠が「好調だね」と太鼓判も…印象的だった“本質を突いた”メッセージ
絶大な信頼の証? ボールロストが目立つも交代の気配なし
トッテナム戦の3バックセンターでプレーする長谷部誠がボールを持つと、鎌田はボールの受け手として上手くスペースに顔を出し、味方を上手く使いながらチャンスメイクをする。長短のパスを織り交ぜた展開力が光り、スピードのある左WBアンスガー・クナウフをスペースに走らせるなどプレーの連続性が素晴らしい。
一方、ペナルティーエリア付近ではチャンスメイクで違いを見せる。好機を見極める感覚が研ぎ澄まされており、そこへいつでもチャレンジする。相手CKの時でもクリアと同時にカウンターへ移行するためにものすごいダッシュでセンターラインまで一気に駆け上がるシーンが少なくない。
守備での貢献も優れている。後半の決定機シーンの1つで鎌田は重要な仕事をしている。相手のGKから右CBへパスが出た瞬間に素早く距離を詰めてプレス。サイドや縦へのパスコースを完全に切った状態でつっかけたので、相手は近くにサポートへ来ていたボランチへのパスを選択した。
だが鎌田のプレスからそのパスを読み切ったフランクフルトのセバスティアン・ローデがボールを奪い取り、最後はイェスパー・リンドストロムがフリーでシュートに持ち込んだ。残念ながらシュートは枠外へ飛んだが、チームとしての守備連係から作り出した確かなチャンスとして評価されている。
後半に入るとボールロストするシーンが目に付いたのは、連戦の疲れからかもしれない。ただ、グラスナー監督に鎌田を交代させる気配は全くない。主軸として違いをもたらしてくれるという期待がそこにはあるのだろう。
すべてが順風満帆だろうか。「Frankfurter Allgemein」紙に「フランクフルトにとって“特別に価値のある選手”という評価がふさわしい」と表現されたなか、長谷部がドイツメディアに次のような言葉を残していたのが印象的だった。
「非常に好調だね。大事なのは今後も今の調子でプレーし続けること。大事なのはパフォーマンスをコンスタントに発揮することだから」
調子がいい時だからこそ謙虚であれ。38歳の今もトップパフォーマンスを披露している長谷部のメッセージはとてもシンプルで本質を突いている。たとえ自身の調子が良くない試合でもチームにとってポジティブな働きをもたらす。あるいはチームが上手くいっていない時に流れを変えるプレーで支える。鎌田には今後、主軸選手としてさらにチームパフォーマンスを高める関わりを期待したい。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。