W杯で日本の脅威に…ドイツ代表“要警戒”コンビとは? レジェンドが賛辞「いつでもプレーする」、代表監督も絶賛「重要な選手」
【ドイツ発コラム】19歳ムシアラが存在感、誰もが認めるポテンシャル
元ドイツ代表キャプテンで、今はテレビ解説を務めるローター・マテウスが9月に行われたUEFAネーションズリーグのドイツ対イングランド戦(3-3)後にこう話していた。
「かつてルイス・ファン・ハールがバイエルンで監督をしていた時代に、『ミュラーはいつでもプレーする』と断言し、話題を呼んだことがあった。今、『ムシアラはいつでもプレーする』という状況になってきている」
ジャマル・ムシアラは19歳ながらドイツ代表、そしてバイエルン・ミュンヘンで欠かせない重要な戦力といっても、もはや過言ではない。トップ下が最適なポジションだが、オフェンシブな両サイド、インサイドハーフ、ボランチでもプレーができる。そしてどのポジションで起用されても、期待されたパフォーマンスをしっかりとピッチで表現するから素晴らしい。
代表週間後の8節レバークーゼン戦(4-0)ではスタメンで起用されると1ゴール2アシストの活躍でリーグ4試合連続未勝利中だったチームに貴重な勝ち点3をプレゼントした。
そんなムシアラについてドイツ代表監督のハンジ・フリックはこんなふうに語っていたことがある。
「ジャマルは多くのポジションでプレーできる。そして守備でも器用で俊敏なプレーができる。チームにとって選択肢ができた。何より彼は相手からのプレッシャーが激しい時でもボールを保持して、味方にスペースと時間を作り出してくれる。ほかの誰もできないことができるスキルを持っている」
イングランド戦では独特なリズムと小刻みなステップでハリー・マグワイアからペナルティーキック(PK)を奪取。マグワイアはその動きに全く付いていけず、ボールに触ることもできないままムシアラの足を払ってしまった。あったはずのボールがない。マグワイアには残像のように見えていたかもしれない。
元バイエルン会長ウリ・ヘーネスも「今日のようなプレーを見せてくれているのだから、ジャマルはバイエルンでも代表でもレギュラーとして起用されなければならない選手だ」と、その活躍に太鼓判を押している。
2点目のシーンで起点となったのもムシアラだ。中盤でエネルギッシュにボールを奪取すると素早くパスを展開。ティモ・ヴェルナーを経由して、ボールが渡った先はカイ・ハフェルツだ。エレガントにボールをコントロールすると、スムーズな動作から左足シュートをゴール左へと流し込んだ。
このゴールにはフリック監督も賛辞を惜しまない。
「素晴らしいプレーだった。あれこそ彼がトレーニングでいつも見せてくれているものだ。試合であれを出せることからも、勇敢で自信に満ちていることの表れだ」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。