日本とW杯で対戦のドイツ、守備の要リュディガーがなぜチームの“浮沈の鍵を握る”のか
子供の頃から「戦士」と言われた強きマインド
どんな試合でも手を抜く気持ちは全くない。だから0-1でハンガリーに負けた後に楽観的なコメントを残すわけがない。
「がっかりしているよ。僕らはもっと多くのことを願っていたのに、前半はすべての競り合いで負けていたし、すべてのセカンドボールを相手に取られていた。簡単なミスばかり。間違いなく僕らは自陣深くで守ろうとするチーム相手に何かを見つけなければならない。ハンガリーは今日いいプレーをしていた。いい守備をしていた。戦術的に非常に良く準備がされていた。でも僕らはそれでもゴールへの糸口を見つけなければならないし、そのためにできることをもっとやらなければ」
ワールドカップを2か月後に控えた今、ドイツ代表の状態は良くない。特に守備時の不安定さはドイツメディアやファンを不安にさせている。9月26日のイングランド戦では出場停止処分でリュディガー不在のなか、ミスが重なっての3失点。フリック監督も「守備時のオートマティックさは改善されなければならない」と口にしている。だが、リュディガーは追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮する。
「子供時代から父親に『ウォーリアー(戦士)』と名付けられていたよ。壁があったら僕は何回もそこへ向かって立ち向かっていく。そして最後には乗り越えていくんだ。僕はそうやってきたし、批判とどのように向き合っていくかを何年もかけて学んだ。誰もが自分の意見を口にしてもいいけど、僕にとって大事なのはチームメイトと監督の声だ」
W杯まで代表で活動できる時間はもうない。各選手はそれぞれ所属クラブでコンディションを整え、パフォーマンスレベルを上げるために自分と向き合わなければならない。守備の要としてリュディガーは自分たちが直面している壁を乗り越えるために味方を鼓舞し、指示を飛ばし、驚異的な守備範囲で相手の攻撃を抑え込み、味方の攻撃につなげるために全力でプレーをし続けるだろう。ドイツ浮沈の鍵はこの男が握っている。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。