日本とW杯で対戦のドイツ、守備の要リュディガーがなぜチームの“浮沈の鍵を握る”のか
【ドイツ発コラム】「今が選手として自分のピーク」と語るほどコンディションは良好
ドイツ守備陣にそびえる巨大な壁。それがアントニオ・リュディガーだ。「最悪の45分間」と地元メディアにも酷評された9月23日のUEFAネーションズリーグ・ハンガリー戦でも、セットプレーからの1失点で済んでいたのはリュディガーの存在によるところが大きい。
シュツットガルトでトップデビューを飾ったリュディガーは、その後イタリア1部ASローマ、イングランド1部チェルシーと活躍の場を移し、今夏にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝クラブのスペイン1部レアル・マドリードへと移籍した。まだチームでレギュラーというところまでは来ていないが、元ドイツ代表MFトニ・クロースは「中立的な見方をしても、トップ補強だと思う。極めて重要な選手になるはずだ。ヨーロッパにおけるトップDFを獲得できたというのはチームにとっていいこと」と信頼を口にしている。
どれだけサイドから鋭いクロスを上げても、リュディガーのいるところへボールを上げてしまったら、すべてクリアされてしまう。守備範囲が広く、制空権も高い。身体をねじ込んでボールを奪取するスキルは世界レベルだ。
「今、選手として自分のピークに来たんじゃないかと思うんだ」というほどコンディションは良好だ。ブラジル代表のネイマール(パリ・サンジェルマン)も「好きな選手だよ。非常に強靭で大きさもある。僕はそうではないけど、不安を抱かされるFWもいるだろうね」と話していたこともあった。
代表チームにおいてハンジ・フリック監督との関係性は非常に良好だ。中心選手として全幅の信頼を寄せているし、リュディガーも安定感の高いプレーでそれに応えている。
「彼の正直さと“僕らとしての気持ち”を大事にするところが好きなんだ。欧州選手権(EURO)後に話し合いがあったんだけど、僕にリーダーとしての役割を期待していると話してくれた。心に響いたよ」
中心選手として責任感を持って試合に臨む。勝ち試合でも不要なミスで失点をすると烈火のごとく怒る。6月シリーズのイタリア戦は5得点で大勝したが、それよりも2失点をしたところが納得いかない。
「非常に起こっていたね。3点取った段階でおそらくみんな『俺も1点取りたい』と思ったんじゃないだろうか。ああした試合はいい形で試合を終わらせなければならない」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。