未知の世界でゼロからスタート なぜ東大元JリーガーはIT業界でのセカンドキャリアを選んだのか

30代は「ビジネス感覚を養っていくのが第一目標」

 仕事のやりがいに関しても、選手時代と今では大きく異なってきたという。新しいフィールドで成し遂げたいことは何なのかを聞くと、久木田は30代を新しい礎を築くための準備期間として位置づけ、「日本の今の豊かさを少しでも維持することに貢献したい」と語っている。

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「日本企業の生産性はここ数年向上していなくて、企業価値も順位的には少しずつ下がっている。自分にも娘が生まれましたし、今の日本の豊かさを維持することに寄与したいという感覚を持っていて、それがやりがいだと言えます。ただ、今の時点ではやりがいを十分に感じているかと言えば、そうではありません。まだまだ勉強することは多いです。30代のうちに企業価値や収益を上げるためにはどうすべきか、というビジネス感覚を養っていきたいというのが第一の目標。30代のうちに視野を広げ、それを経て40歳になったときに具体的にどういった形で社会に貢献できるのかは、その時に改めて考えたいなと思っています」

 今後、サッカー界に関わっていくかどうかは未知数だが、その場合でも「ビジネスの知識は必要不可欠」だと強調する。“東大卒でJリーガー”という究極の文武両道を貫いた久木田の挑戦はまだ始まったばかり。ビジネスマンとして新たな道を極めようとする男の第2章に期待せずにはいられない。

(文中敬称略)

[プロフィール]
久木田紳吾(くきた・しんご)/1988年9月24日生まれ、熊本県出身。熊本高―東京大―岡山―松本―岡山―群馬。東大出身初のJリーガーとなり、岡山時代の2014年にFWからDFへコンバート。プロ10年間でJ2通算152試合12得点、J3通算43試合1得点をマーク。2019年限りで現役を引退し、翌20年4月から大手ソフトウェアメーカー「SAPジャパン」でセカンドキャリアをスタートさせた。

(石川 遼 / Ryo Ishikawa)

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