黒星発進のフットサル日本代表、木暮監督が「先発ヴィニシウス」にこだわる理由とは?
ヴィニシウスは木暮監督からの信頼を実感
しかし、木暮監督は就任早々からヴィニシウスを招集している。若手を積極的に起用する木暮監督が、シュライカー大阪時代の愛弟子を招集したことは、ヴィニシウスがすでに34歳となっていたことから、驚きをもって捉えられた。そこにはヴィニシウスの実力とともに、「リーグ戦で結果を残した選手は招集する」「実力があれば年齢には捉われない」というメッセージも含まれており、その点において木暮ジャパンの象徴的存在だ。
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サウジアラビア戦で、ヴィニシウスは試合の入り自体は悪くなかった。実際にFP吉川智貴のハイプレスでボールを奪い返した際には、先制点を挙げる活躍も見せている。しかし、その後にあった吉川からのパスをファーポストでフリーの状態で受け、無人のゴールにボールを蹴り込めなかったシュートミスのあとは、動揺が見られて精彩を欠いていった。
Fリーグ最強の得点者の信じられないミスだったが、ヴィニシウスは「セカンドポストにいる時にシュートを打つと、相手の選手がスライディングで戻ってきたり、GKが戻ってくることがある。でも、上のコースは消せないから、常に上を狙うようにしている。無人のゴールなのは理解していたけど、昨日の試合はGKもすごく動きが良かったし、戻ってきて体に当てるのではないかと思った。ちょっと力を入れすぎてしまった。まだ映像を見返していないけれど、上に蹴って、ポストのギリギリを狙ったけど、外れてしまった。先制点を決めたけど、あのミスの悔しさの方が残っている。あれを決めていたら、絶対に試合は違うものになっていた」と振り返った。
木暮監督は「後半のスタートからは、(水谷)颯真を起用しましたし、そんなことはないと思います。そこはいろいろなゲーム状況、スコアが必要なのか、守備でリズムを作りたいのか、それはヴィニシウスだけでなくて、ここに連れてきた14名すべての選手に対して、あらゆるオプションを持っている。ただ、そのオプションを使える、使えないかは、ゲーム前に想定しているものより、実際にゲーム中に起きていて、何の改善が必要かにあると思う。そのなかで誰を起用するかを考えている」と、ヴィニシウスの重用を否定した。
だが、若い日本人選手が同じミスをすれば、おそらくその試合では二度と使われなかっただろう。大阪時代にも「日本人には厳しいけれど、ブラジル人トリオ(当時はヴィニシウス、アルトゥール、チアゴ)のミスには何も言わない」という声はあったが、かつての日本代表のエースだけに、主力選手をどれだけ気持ち良くプレーさせるかに対する手法の一端かもしれない。
ブラジル代表戦後、先発復帰したヴィニシウスは、木暮監督からの信頼を感じている。「ずっと木暮監督とは大阪の時も一緒にやりましたし。ただ、僕だけじゃなくてみんなを信頼していると思う。初戦は緊張感があるし、誰を出しても信頼していると思う。明日、もしかしたら先発メンバーは変わるかもしれないけれど、大事なところで監督に信頼してもらえている、期待してもらえているのは感じるし、本当に応えたいと思っています」と、初戦のミスを挽回する決意を語った。
9月30日には韓国代表との日韓戦、そして10月2日には2016年大会の決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に敗れたベトナム代表との試合を控えている。ヴィニシウスの得点力に大きな期待がかかる2連戦で、初戦で残った悔しさを払拭するプレーを見せてくれるはずだ。
(Futsal X・河合拓 / Taku Kawai)
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