アセンシオと家長昭博 デビュー前夜の衝撃…11年前に分かれた明暗 マジョルカ元同僚が明かした名手の凄み
家長の当時を回想したコンパニー氏「人間的に礼儀正しく、いい思い出として残っている」
2013-14シーズンのマジョルカには同じく攻撃的MFのポジションに家長がいた。選手の素質としてはほかを圧倒すらしていたものの、結果的には2選手の間で明暗が分かれた格好になったのは、内に秘めた確固とした自信ではないかと見ている。
「アキは体格的にガッシリしていてフィジカル的に強く、ボールのキープ力が高かった。それに最初の数メートルでスピードがあった。選手としていい条件が揃っていたし、持っていた能力は一番だってチームメイトとも話をしていた。結果的に上手くいかなかったのは言葉なのか、チームやサッカーへの適応なのか、プレー機会が継続的になかったからなのか、自信の問題なのかよく分からない。人間的にはとても礼儀正しく、きちんとしていて魅力的でいい思い出として残っている」
2選手を単純に比較することはできない。ただ与えられた条件や環境の中でアセンシオが結果と自分らしさを出してきたことは事実だ。
「マルコはマジョルカにいる時はチームやクラブの状態が悪かったから心配していたけど、個人としては非常に冷静で選手として新しい挑戦に向かっていた。レアルやバルサが獲得に動いていた時も周囲の噂や喧騒から一線を引いていた。レアル・マドリードへ移籍した当時も多額の移籍金が発生したわけでもなく、それほど知られた存在ではなかった。だからゆっくり成長していく自由と落ち着きが与えられ、エスパニョールでのレンタルのあと、ジダン監督から信頼されてすぐに結果を出す幸運もあった」と分析している。
アセンシオの今季について、コンパニー氏は試合に出続けさえすれば対戦相手にとって危険な存在になると見ている。「膝の怪我をする前のようにコンスタントに出場のチャンスを得られるようになるのを願っている。去年も彼に対する批判はあったけど、僕から言わせると根拠に乏しい。だってチームで3番目に得点を決めたんだから。今はしっかりと怪我から回復していい感触を取り戻してほしい」。
同じ流れでスペイン代表としてのW杯でもアセンシオの活躍する姿を予想している。
「現状で出場時間の少ない彼をルイス・エンリケ監督が招集しているのだから十分に信頼されているということ。同じく怪我明けのアンス・ファティは出場が少ないということで代表に入っていない。モチベーション的に問題なければマルコがほかとは違う選手になる。セットプレーやシュートから一瞬で試合を変えられる選手。ここから先レアル・マドリードで出場時間を増やしていけばスペイン代表で重要な選手になるだろう」
(島田 徹 / Toru Shimada)
島田 徹
1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。